量子コンピューター、来年度予算に32億円 米国先行に危機感
量子コンピューターは、大きく2種類に分類できる。1つは「量子ゲート方式」と呼ばれるデジタル型の量子コンピューターで、もう1つが「量子アニーリングマシン」に代表されるアナログ型の量子コンピューターだ。
IBMなどは、量子ゲート方式を開発中。汎用性があるため、量子コンピューターの本命と言われているが、現在、量子ビットは十数個にとどまっており、実用化にはなお相当の時間がかかりそうだ。
ただ、仮に実用化されれば、通信暗号を短時間で読解できるようになるため、現在のセキュリティシステムの前提が覆る可能性がある。
NTTは機能特化で勝負
一方、量子アニーリングマシンは、イジングモデルという相互作用している多数の磁石(スピン)が自然に安定した組み合わせになる現象を利用して計算する。
量子ゲート方式とは違い、用途は組み合わせ最適化問題に限られるが、カナダのディーウェーブ・システムズが2011年に世界初の商用量子コンピューターとして売り出して注目を集めた。
組み合わせ最適化問題とは、膨大な数の選択肢の中から一番良い選択肢を見つけ出す問題で、「巡回セールスマン問題」が有名だ。
セールスマンが各都市をまわる最短経路を探すという単純な問題だが、これがそう簡単には解けない。都市数が5のときは経路は12通りしかないが、10になると18万1440通り、20になると6京0822兆通りとなる。
60都市ではなんと10の80乗通りと、観測可能な宇宙にある全原子数と同じ数まで増加する。
従来のコンピューターでは、組み合わせの数だけ計算をしなければならず、一定以上のデータ量になると計算時間が爆発的に増え、解くのは事実上不可能となる。
これに対し、多くの組み合わせ最適化問題はイジングモデルに変換できるため、この原理を用いたマシンは短時間に問題を解くことができる。
NTTが開発している「コヒーレントイジングマシン」もイジングモデルに基づいて計算しており、量子アニーリングと同じグループに属する。
「2018年度の終わりごろには、10万スピンのマシンが動いているはずだ」──。NTT物性科学基礎研究所量子光制御研究グループの武居弘樹上席特別研究員はこう話し、現行モデルの50倍のスピン数を持つ次世代コンピューターの開発に自信を示した。