香港に子どもを通わせる中国人家族のホンネ 中国大陸から香港へ通う子供たち<中>
部屋の一つは文迪君の部屋に充てられていて、その壁の一面には学習用の黒板が貼られている。「将来の君は、いま頑張る君に感謝する」という標語まで書かれている。別の壁には、人が成功を手にするプロセスが図説されていて、「やりたくない」から始まって、最後には「やり遂げた」と笑顔で万歳ポーズをとる人型のイラストが描かれていた。
そんなふうに子どものやる気を鼓舞する教育熱心な熊燕さんは、息子が香港の学校を終えた後の将来のイメージを次のように語る。
「大陸は発展途上ですが、彼らが大きくなる頃には、力を発揮できる時代が来るでしょう。でもどこに行くかは実は同じです。(一国二制度が終わる)50年後は、香港は中国のものになるでしょう。香港は今でも中国のものですが、30年後にはすべてのシステムが大陸と同じになるでしょう。だから将来どこで働くかは彼の希望によると思いますが、私は大陸でもいいと思っています」
文迪君は、毎朝自宅から出入境ゲートまで約20分歩き、香港に入ってからは電車、バスを乗り継いで1時間以上かけて香港北部にある小学校に通う。長い通学時間は、越境して通う子ども達が共通して抱える苦労だ。学校によれば、約730人の生徒のうち大陸から通う生徒は200人以上。約3分の1を占める。
応募者のほとんどは、中国本土に住む子どもたち
6月8日。香港北部、上水地区の木々は青々と茂っていた。その美しい街路樹が並ぶ通りに面する小学校、上水恵州公立学校では9月から始まる新学期に向け、新入生を募集する試験があった。正午過ぎ、学校の門が開放されると、大人たちに手を引かれた子どもたち、いやむしろ子どもの手を引く大人たちで、校内は朝の山手線のような混雑となった。
そして中国本土の言葉である普通話が大声で飛び交った。学校によれば、15人の募集枠に応募は400人近く。募集に際し、香港と本土の子の区別はしないが、ふたを開けてみれば応募者のほとんどは、中国本土に住む子どもたちだったという。
両親が中国人でも香港で生また子どもが香港籍を得られた最後の年が2012年。その子どもたちが就学年齢に達するこの1~2年、香港が受け入れる越境児童の数はピークを迎える。
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