トヨタ「SAI」が売れなかった理由 HV専用の“小さな高級車”、挽回狙い大変身
今回のマイナーチェンジで外観のフロント、リアのさまざまな部分を大きく変え、最低価格を少し引き下げたのには、こうした背景がある。
新モデルの外観で特徴的なのは、フロントマスク。クルマのデザインを決定づける要素の一つであるヘッドランプは、「超ワイド」として、真ん中から端までつながるほどの大きなサイズとした。
こうした形状は珍しく、技術的にも難しい課題をクリアしたという。「パッと見て高級感のある分かりやすいデザインとした」(加藤主査)。デザイン部の柴田秀一室長は「お客様の記憶に残るエモーショナルで先進的なデザインを突きつめた」と胸を張る。実車を見ると、確かに従来モデルにはなかった迫力が出ている。
セダン離れが進む国内新車市場
ただ、今回のSAIは従来モデルの弱点をつぶしてはきたが、そもそも難しい立ち位置にある。そもそも国産車ではセダンというマーケットが、冷えている。セダンとは4ドアでボンネットとトランクを持つ5人乗りの車。昭和の時代までは、乗用車といえばどれもこれもセダンだった。消費者は排気量や車体の大きさ、価格に応じて自分に見合う車種を選んでいた。
ところが、平成に入ると時代は一変。ミニバンやコンパクトカー、SUV(スポーツ多目的車)など車種の選択肢が広がり、セダン離れが進んだ。トヨタも「コロナ」や「カリーナ」といったかつての定番セダンを廃止。「マークⅡ」は「マークX」に名前を変え、伝統の「クラウン」ですら右肩下がりの販売を強いられてきた。この状況で、トヨタ内でも競合車が多く、HV専用という利点を最大限に生かせないSAIが埋没してしまいがちなのは仕方がない。