連続減益は18年ぶり、「章男トヨタ」の正念場 次なる課題として「賢い」クルマづくりを強調

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一方、2018年3月期の営業減益要因を見ると、為替変動の影響は1100億円と前期よりも利益の圧迫度は弱まる見通し。レートの前提は1ドル105円とさらに円高が進むとの予想で、足元に比べても保守的だ。

ただ為替影響を除いても3000億円の減益要因があるため、増益にはならない。増える費用の中でも大きいのが「その他」という項目。前期比で1300億円も増加する計画だ。その大半を占めるのが北米でのインセンティブ(販売奨励金)とみられる。トヨタが販売店に対して値引き原資として支給するものだ。

”ドル箱”の米国市場が厳しい

2017年3月の実績でみると、たとえば主力セダン「カムリ」のインセンティブは1台あたり4328ドルで前年から20.8%増えた。ほかの車種も含めて足元は総じて膨らんでいる。販売好調だった稼ぎ頭の北米市場が鈍化しているためで、金融収支も悪化する。トヨタの今年度の北米での販売見通しは282万台。前期比1.7万台減であり、2期連続でほぼ横ばいとなる。市場の頭打ち感は強い。

一方、原価改善による利益の押し上げ効果は900億円の見込みで、前期の4400億円に比べると大きく縮む。豊田社長は「”もっといいクルマづくり”が定着し、走りとデザインについてはお客様から評価をいただけるようになった」と自己評価する一方、コスト意識が薄れているとの危機感がある。

豊田章男社長は、トヨタの課題として「賢いクルマづくり」を挙げた(撮影:尾形文繁)

「性能や品質の競争力向上を優先し、コストやリードタイムは後回しになっていないか」。「適正販価―適正利益=あるべき原価という基本原則を徹底的に突きつめる仕事ができているか」。

もっといいクルマづくりのために、「賢い」クルマづくりをしよう、と豊田社長は社内に発破をかける。そのために昨年4月、機能軸から製品軸のカンパニー制に移行させる組織改編を行った。「1000万台を超えて大きくなり過ぎたのが一番の構造的な問題」として、その問題解決に組織面からも着手したが、まだ道半ばだ。

さらに利益を圧迫する構造的な要因が、設備投資に伴う減価償却費や次世代技術に向けた研究開発費の増加だ。自動車業界は電動化や自動運転、人工知能(AI)など、大きな技術革新による転換期を迎えている。新たな投資がかさむのは避けられない。

設備投資は1兆3000億円、研究開発費は1兆0500億円でいずれも前期より増え、巨額だ。豊田社長は「R&D、設備投資は1兆円規模で続けている。トヨタぐらいの規模になると、それを継続していくことが一つの責務だと思っている」とする。

一方、苦悩も見せる。「売上高がなかなか増えない中で持続的に投資を続けてきた。パラダイムチェンジの中で、利益を生まない分野にも投資しないといけない。ここが難しい」と話したうえで、「将来への種まきは売り上げが伸びるときはできたが、伸びないとなると、何かを止める、そして何かを変える決断が必要になってくる」と断言した。

これまで全方位で技術開発を進めてきた巨人トヨタ。2期連続の減益決算予想に垣間見える苦悩は相当に大きい。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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