冠婚葬祭業に蔓延する「個人請負」の深い闇 従業員約7000人のうち正社員はたった32人
個人が会社と業務委託契約を結び「個人請負」となると、労働基準法など労働法規がいっさい適用されない。その結果、解雇規制はなく、職を失っても失業保険給付はない。労働組合を組織して使用者に団体交渉を申し入れることもできない。
また時間外、休日、深夜労働手当がなく、有給休暇もない。最低賃金も適用されない。年金や医療保険もすべて自己負担だ。ひとたび個人請負となると、パートや派遣などの非正社員に輪をかけた無権利状態に置かれることになる。
こうした業務委託契約を用いる狙いについて、ベルコは本誌の取材に「係争の解決の観点より好ましくないので、回答は控えさせていただく」としている。ただ、裁判所等に提出している書面では、「実際にサービスを提供する立場にある者が、頑張れば頑張るほど収入が増える業務委託契約の形式をとることによってこそ、現場の士気が高まり、よりよいサービスが提供されるという50年来の経験則より、このような形態をとるものであって、何ら労働法規を潜脱する目的などもっていない」と反論している。
個人請負なのに「人事異動」
これに対して訴訟を提起した元従業員は、「実際は頑張って長く働くほど収入が不安定になりかねない」という。
代理店は互助会会員を獲得し、ベルコからの成約手数料で経営している。ただ一度支払われた後でも、解約されると、次の手数料からその半額程度が差し引かれる。そのため、「頑張って成果を上げて稼いでも、ベルコで働くかぎり、いつ差し引かれるかわからない。頑張った分、反動も大きい。これでは生活設計ができない」(元従業員)。
仮に雇用契約を結んだ労働者を相手に、同様のことを行ったら、「労働基準法の賠償予定の禁止(16条)や賃金全額払いの原則(24条)に抵触する」(原告側代理人の淺野高宏弁護士)という。
収入が不安定なだけではない。ベルコの個人請負には「人事異動」がある。独立した事業主である個人請負に対し、通常、人事異動はありえない。管理職まで個人請負としている点を含め、契約形式と実態の乖離があるとの原告側の指摘に対し、ベルコは「どのような名称を使用しようと勝手である。支社長、経理という名称があるからといって、指揮監督命令系統があるとは限らないし、実際、そのような関係はない」「(人事異動については)業務受託者と相談して、適宜、業務内容および業務地域を契約により決定している」などと主張している。
裁判所に提出された資料では、ベルコは齋藤社長名の「通達」で「人事異動」を「命ず」としている(上写真)。元従業員によれば代理店主はたびたび人事異動で入れ替わっていたという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら