映画「君の名は。」が中国でも支持される秘訣 作品力だけでなく、数多くの仕掛けがあった
日本から1年遅れの上映も珍しくないなか、どのようにしてスピード公開を実現したのか。
「社員に薦められて過去の新海作品を見たが、すっかりファンになってしまった」。今回、中国配給の窓口となったアクセスブライトの柏口之宏社長はそう語る。同社の取締役で、中国映画製作・配給大手エンライトメディアのアニメ部門・彩条屋影業動漫集団の易巧社長も、「新海作品は中国アニメファンの間で根強い人気がある」と配給を後押しした。両者の強いプッシュによって、エンライトメディアが配給権を獲得した。
「検閲」をいかにくぐり抜けるか
次の課題は中国政府による検閲だ。反政府的な内容だけではなく暴力、ポルノ、迷信など多くの要素が審査される。今年中国で4000スクリーン規模と鳴り物入りで公開した日本映画『寄生獣』は、検閲によって100分近くもカットされ評価を落としたと言われる。柏口社長は「我が社のノウハウとエンライトメディアの信頼性が力を発揮した。中国では新興映画会社が続々誕生しているが、政府との関係においては老舗に一日の長がある」と胸を張る。「君の名は。」は検閲による削除はほとんどなく、異例のスピード認可が実現した。
宣伝でもエンライトメディアの「グループの総力を結集した」(柏口社長)。チケット販売サイト大手の猫眼電影での大々的な宣伝や、「西遊記之大聖帰来」の田暁鵬監督によるSNSで推薦などがその例だ。
他にも中国アニメ配信サイト大手・ビリビリ動画では11万枚ものチケット無料プレゼントが実施されたほか、ネットでのディスカウントなど強力なプロモーションが行われた。中国配給元の“本気”が、成功を下支えした。
いかにも中国らしい追い風があったことも紹介しておきたい。11月末、中国メッセージアプリ最大手「ウィーチャット」で、上海時光無線科技有限公司のアプリ「時光相冊」(Everfilter)が注目を集めた。風景写真をアップロードすると、新海誠風の美しいアニメ絵に加工されるというもの。この「Everfilter」は許諾なしに新海作品の映像を直接利用していた、いわば「海賊版」だった疑惑が浮上しているが、ユーザーが続々と加工した写真をSNSにアップすることで、「新海誠」という名前は一気に拡散した。
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