JALが「ミステリーツアー」に頼りたい事情 全国どこでも、「行き先不明」の航空券とは
JALの国内線事業は決して順調とはいえない。国内線全体の搭乗率は2016年度上期(4~9月期)で68%。前年比では1.1ポイント改善しているが、前出の幹部は「一般的に損益分岐点は65%前後。ただ70%以上には持っていきたい」と話す。
羽田発着の伊丹、福岡、札幌といった路線は観光だけでなくビジネスパーソンの需要も旺盛なため、70~80%前後という高い搭乗率を維持している。ただ、そのほかの路線は低いと40%台をつけることもあり、需要喚起が課題だった。
国内で稼げる路線を広げたい
搭乗率の高いドル箱路線であっても、全日本空輸(ANA)やスカイマークなど他社との競争が激しい。JALの国内線の客単価は、上期に前年比1.6%減となっている。特に今年度は「ANAがゴールデンウィークや夏休みなどにアグレッシブに値段を下げてきたため、追随せざるを得なかった」(JALの斉藤典和専務執行役員)。搭乗率と単価の向上。これらはJALに限らず、航空業界に共通する悩みだ。
そうした中で「どこかにマイル」を使ってまず特典航空券で地方に行ってもらい、そこから国内旅行の需要が広がれば幅広い路線が底上げされるという好循環をJALは期待する。
また、マイレージ事業の収益性を考えたときにも、特典航空券への交換を促す意味は大きい。
顧客が貯めたマイルを交換できるものは航空券だけではなく、食品や酒、時計やかばん、商品券やポイントなど幅広い。ただ顧客がJAL以外のサービスや商品に交換した場合、その分の費用はJALが負担することになる。
特典航空券はいわば空席を埋めるための手段の一つ。無料で顧客を乗せるのと変わりはないが、席が埋まらないよりはいい。他社へのキャッシュアウトよりも合理的だ。実際JALも決算資料の中で、マイル費用の削減策として「特典航空券による償還の推進」を挙げている。
地方への流動を促すことで国内線の座席を埋め、マイル費用も削減できる。「どこかにマイル」を使ってみたいと思ってもらえれば、顧客のつなぎ留めにもなる。競争の激しい国内線でのJALなりの戦い方だ。
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