【産業天気図・パルプ・紙】値上げで収益低下一服か、「曇り」空に薄日も
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
紙パ業界の2008年度は、前半、後半とも曇り。ただ、ニュアンスにやや変化が出てきた。ここ数年というもの、古紙価格、輸入チップ、原油、製紙用薬品と、原燃料価格のすべてが3割~数倍と大幅に値上がりを続けている中で、製紙メーカーは収益を圧迫されてきた。だが、昨年夏からの製品価格への転嫁が進んでいる。
ことに、総生産量の2割弱を新聞用紙が占めている日本製紙グループ<3893>をはじめ、大手各社は、新聞用紙という巨大な需要先を抱えつつも28年間も値下げ要求を呑まされる一方だった。だが、ついにこの4月から5%程度の値上げを実現した。
さらに、石油からガスやバイオマスなどボイラーの燃料転換を進めて来た効果が現れ始めており、原油高の影響はかなり緩和されつつある。これによって収益のこれ以上の低落には歯止めがかかりそうだ。古紙価格の暴騰に悩まされている段ボール原紙、段ボールも、下期以降に再値上げに踏み切る公算で、そうなれば板紙・段ボール関連トップの王子製紙<3861>や専業のレンゴー<3941>などの今09年3月期収益予想は、会社計画を上回ることになりそうだ。
ただし、急成長が望めるわけではない。紙パ業界は典型的な国内産業で、なおかつ景気の影響を受けにくい。この数十年というもの、ITの進化による紙需要の低下が懸念されながらも、需要は年間1%内外の伸びを続けている。メーカーの統合も進んでいる。昨年稼働入りした日本製紙石巻工場や大王製紙<3880>、今年は王子製紙富岡工場や北越製紙<3865>で新鋭設備が稼働するものの、経営統合などによる老朽設備の統廃合も進んでいるため、総生産量は1割ほど増える程度。国内消費の爆発的増大が見込めない状況ではこの水準でも、増産による国内市場の軟化を心配する向きもある。だが、当面、新鋭設備がすぐにフル稼働になるわけではない。製紙メーカー不在の北米市場への輸出などを中心に、各社様子を見ながら増産体制を敷いていくことになる。
【小長 洋子記者】
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら