「移動の未来」は私たちの未来そのものである グローバルなモノの移動の最前線

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国際貿易の歴史を考えるとき、コンテナの重要性を忘れることはできない。コンテナの発明は、貿易の全てを変えてしまったと言っても過言ではない。統一基準でつくられ、積み重ねが可能な金属製のコンテナが誕生するまで、港での揚げ積みは何千年もの間、基本的には同じ方法で行われていたのだ。荷物の揚げ積みだけで10日間かかることも珍しくなく、海外からの輸入品には価格の1/4以上のコストが上乗せされていた。膨大な時間とコストという大量輸送の障壁をコンテナが取り払った時、グローバルな物質の移動は加速の一途をたどることを運命付けられた。

コンテナの誕生がもたらしたものは、輸送時間の短縮やコストの削減にとどまらない。コンテナ輸送は、企業間の競争環境を一変させ、生産拠点の海外移転という新たなトレンドを作り出した。消費地と生産地が近接する必然性はなくなったのである。そして、全てを自社内で行うことによる輸送コストの削減をもたらした垂直統合は、国境を超えて世界中から最も優れた最も安い製品を調達する水平分業型に取って代わられた。家電市場に君臨していたアメリカ企業をその座から追い落とし、日本企業の勃興をもたらしたのは、コンテナ革命がもたらしたグローバリゼーションであったともいえる。本書で語られる移動の未来が、自社のポジションや、自身の生活をどう変えていくのか想像しながら読み進めると、新たな世界に胸が高鳴るはずだ。

車には、実は多くの非合理が残されている

『「移動」の未来』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

最も身近な移動手段である車についても多角的に語られ、多くの紙面が割かれている。ハイブリッド車や電気自動車など進化を続ける車にも、実は多くの非合理が残されている。例えば、車は平均すると一日の内22時間は使われることがない。また、標準的な車幅が約1.8メートルなのは工学的に有利だからではなく、2頭立ての馬車のサイズに由来している。何より見過ごすことができないのは自動車事故によって多くの命が失われていることであり、その事故に対する罰則が軽過ぎることだ。2014年のウォールストリート・ジャーナル紙の調査によると、ニューヨーク市で発生した交通死亡事故の95%は起訴に至らなかったという。近年一躍注目を浴びている自動運転車は車を新たな次元へ導くのか、著者はGoogleや学者へのインタビューを交えながら追求していく。

グローバルな移動によって日々の生活の便利さは向上し続けているが、移動の爆発的増加は限界に近づいている。移動を支えるインフラは多くの場所で悲鳴を上げ始めているにも関わらず、増え続ける世界の人口が、より多くの移動を求めているからだ。移動の未来はわたしたちの未来そのものであり、より良い未来のために、わたしたちは新たなアイディアを生み出さなければならない。本書は移動の未来を少しでも良いものにするためのヒントが詰め込まれている。

村上 浩 HONZ

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むらかみ ひろし / Hiroshi Murakami

1982年広島県府中市生まれ。京都大学大学院工学研究科を修了後、大手印刷会社、コンサルティングファームを経て、現在は外資系素材メーカーに勤務。学生時代から科学読み物には目がないが、HONZ参加以来読書ジャンルは際限なく拡大中。米国HONZ、もしくはシアトルHONZの設立が今後の目標。

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