痴漢犯罪の実態、「動機が性欲」は少数派だ 引き金は「上司」や「同僚」であることが多い
「ところが、実際の彼らは驚くほどふつうの男性で、見るからに逸脱していそうな人はほとんどお目にかかりません。当院に通院している男性の多くが、最終学歴は大卒、企業で正社員として働き、既婚者です。しかも、仕事熱心。家庭では妻から信頼され、子どもから“パパ大好き”と言われるような男性です」
つまり、女性にとっては電車内で背後に忍び寄られても「まさかこの人が」と思う人物であり、家族にとっても犯行発覚後「なぜこの人が」と、にわかには信じがたい人物。女性には、いや、男性にも、性犯罪者=異常者であってほしいという願望があるのではないか。痴漢をするのは、自分とは違う特異な人間だと思いたい。どこにでもいる男性が痴漢をするということは、すべての男性が痴漢になる可能性を秘めているということにもなる。
しかし、社会がどこにもいないモンスターを想定するほど、リアルな加害者像から遠ざかる。どんな人物が痴漢をしているのか見えていないから、対策も立てられない。
監視カメラは抑止力にならない?
「そうやって思考停止してしまうのは、加害者の策略にハマっていることになります。実態から目をそらさないことが痴漢撲滅の第一歩ではないでしょうか。たとえば痴漢が多いことで知られるJR埼京線は、車内に監視カメラを設置しました。これで痴漢をやめる人がいないとは言いません。が、当院のプログラム受講者にこれは抑止力になるか尋ねたところ、スリルを味わうゲーム感覚で痴漢をする人にとっては、“達成する難易度が上がった!”と亢進材料になるだろうと回答されました」
痴漢を知ることでしか、痴漢は防げない。そのために、同クリニックでは、各専門スタッフが全力で、痴漢を含めた性犯罪者と向き合い再犯防止を目指している。次回は、同クリニックでは具体的にどんなことが行われているのか。それを通して見えてくる痴漢の内面とともにお伝えする。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら