30代以下が頼りにしなくなったテレビの危機 メディア世代間ギャップは確実に進んでいる
すでに若者に焦点を定めた、ネット上の動画配信サービスも誕生している。テレビ朝日とサイバーエージェントが手を組み、4月に開始したインターネットテレビ局「AbemaTV」(アベマTV)では、24時間、約30チャンネルを放送している。広告収入が収益源で、誰でも無料で視聴できる。
滑り出しは好調でアプリのダウンロード数は11月2日に1000万を超え、スマホ経由で視聴する20代以下のユーザーが中心となっている。2017年にかけて200億円を番組の充実化や独自コンテンツの制作費に充てる方針で、「週間1000万人ユーザーを目指す」とサイバーエージェントの藤田晋社長は力を込める。
コミュニケーションアプリを展開するLINEが昨年12月にサービスを開始した「LINE LIVE」は、今年8月に月間視聴者数が1900万人を突破。これはスマホに番組をライブ配信するサービスだ。毎日、公式番組20本前後のほか、個人が1000本程度を配信している。視聴者がコメントを送ると画面に表示され、出演者やユーザー同士がリアルタイムに交流できるのが魅力だ。収益柱は有料スタンプと広告となっている。アベマTVやLINE LIVE以外の新興動画メディアも続々と生まれており、この中から新たなマスメディアが生まれてもおかしくない。
コンテンツの魅力をどう伝えるかがカギ
このままでは10年後、ネットに押されてテレビは「老人のメディア」になりかねない。それを食い止めるすべはあるのか。
電通総研メディアイノベーションラボ統括責任者の奥律哉氏は、「テレビのコンテンツの魅力は生きている。複数の端末から見られるよう視聴者に寄り添う必要がある」と指摘する。実際にNHKはスマートフォンをはじめとした通信端末でも番組が見られるよう、番組のネット配信を増やしている。
将来的には全番組を対象としたネット配信を視野に入れ、放送法改正や支払い義務化の可能性も含めた受信料制度全体の見直しを進めている。テレビを持たない若者も増えており、テレビ受信機を契約の対象とするNHK受信料の収入は先細りになりかねない。そうなる前にネット対応を着々と進めている。
民放も一部番組のネット配信は行っている。しかし全番組が対象となると、サーバー代や著作権処理の負担が相当額発生する。さらに番組視聴率を指標としたテレビ広告の商習慣とは異なる、ネット配信にまつわるおカネの稼ぎ方(マネタイズ)も新たに考える必要がある。
ある民放幹部は「オリンピック開催の20年までに、家庭内のテレビがどこまでネットにつながるかが焦点」と語る。テレビがネットにつながると、テレビ番組とネット動画の境目が曖昧となる。テレビがスマホと同じようにさまざまなコンテンツを映し出すディスプレイとなったとき、“メディアの王様”としてのテレビ局は安泰でいられるのか。テレビ番組とネット動画、放送と通信、さまざまな垣根を越えて、視聴者と広告費の奪い合いが過熱している。
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