映画「君の名は。」にJR東日本が惚れた理由 大ヒットに隠された鉄道描写だけでない狙い
感動的な結末の余韻にひたりながら映画のエンドロールを見ていると、「ジェイアール東日本企画」の名前がそこにあった。東宝、KADOKAWA、アミューズ、ローソンHMVエンタテイメントなどとともにこの映画の製作委員会に名を連ねている。
ジェイアール東日本企画は、JR東日本のグループの広告代理店。2015年度の売上高は1090億円で、国内では電通、博報堂DYホールディングス、アサツー・ディ・ケイに続く第4位の座を占める。
駅のポスターや列車の中吊りといった交通広告を得意とするが、他の広告代理店と同様、映画製作への参加も積極的だ。最近でも「ふしぎな岬の物語」(2014年)、「ルパン三世」(2014年)、「映画妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」(2014年)など幅広いジャンルの映画製作に参加している。
以前から「新海アニメ」に注目していた
近年の国内における映画製作は、製作委員会方式をとるのが一般的だ。製作委員会に参加した会社が映画の製作費を分担し、興行成績に応じて配当をもらう。
映画への出資は配当だけが目的ではない。映画に関する権利関係を得るのも目的の一つだ。映画に出資することで、テレビ局はテレビ放映権、映像制作会社はパッケージ化権、ゲーム会社はゲーム化権といった権利を得る。
こうした権利関係も含め、「君の名は。」に出資した狙いについて、ジェイアール東日本企画に聞いてみた。
同社は、新海監督の「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」の映画そのものに加え、その中で描かれる駅や鉄道のカットの緻密さや、美しい色合いに以前から注目していたという。今回、東宝から同社へのオファーがあった際には「社内で作品内容、ビジネススキーム、タイアップの可能性等を考慮した結果、非常に魅力的かつ可能性の高い作品であると感じた」ことで出資に至ったようだ。
「君の名は。」がこれだけヒットしているのであれば、ジェイアール東日本企画に入る配当収入も多いに違いない。ただし、映画は当たり外れがある水モノであり、出資を決める時点でどれだけ配当を得られるか確証はない。それでも出資を決めたのは、配当以外の目的「映画のタイアップ展開にあった」と、同社は説明する。
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