原油相場回復なら米国株に下落リスクあり 産油国会合の減産合意次第で景色は変わる

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そうしなければ、会合の意味はなく、まして原油価格は再び下落に転じてしまう。産油量の水準など、技術的な問題は先送りされる可能性があるものの、とにかく合意したとの事実をアピールし、これ以上の原油価格の下落に歯止めをかける姿勢を鮮明にすることが重要である。

しかし、ここで問題になるのはイランである。イランも今回の会合に参加する模様だが、これまでの経済制裁による産油量の激減で外貨準備が減少し、財政は火の車である。そのため、石油市場に復帰したことを利用して産油量を増やし、出来るだけ多くの外貨を稼ぎたいと考えている。

そのため、「経済制裁前の産油量に戻るまでは、増産抑制の合意には参加しない」との姿勢を鮮明にしている。これは当然のことであろう。しかし、イランを含まない状況でも、今回、産油国は増産抑制で合意することが必要だ。イランの産油量は、経済制裁前は日量440万バレル程度で、現時点では同300万バレル前後と見られている。しかし、産油量を増加させるためには外資の導入が不可欠と見られており、すぐに産油量は増えない見通しである。

「原油高=株高」か「原油高=株安」か

今回の会合をきっかけに、すでに40ドルの重要なフシ目を回復している原油相場は、上昇基調がより鮮明になるだろう。この動きを見て、株式市場は「原油高=株高」の連想から、株価は上昇すると考える。しかし、筆者が調べたところでは、「原油高=株高」と「原油高=株安」になる確率はほぼ同じである(厳密には「原油高=株高」のほうが若干高い)。

これまでは「原油高=株高」の時期が続いてきた。しかし、この関係はある一定の時期を持って終了し、今度は「原油高=株安」の連想が強まるだろう。原油高は個人消費や企業業績を圧迫する最大の要因である。原油価格が安値から大幅に戻すとなれば、インフレ懸念が強まり、米国の利上げ観測が強まるだろう。そうなれば、ドル安を背景に上昇してきた米国株は、上値を抑えられるだけでなく、下落に転じるリスクが高まろう。

本欄で繰り返してきたように、2011年以降「株高=コモディティ安」が続いてきた。このような関係は4年ごとに入れ替わることが、過去の値動きからわかっている。本来であれば2015年で終了するはずだったこの関係が、原油相場の底打ちでようやく「コモディティ高=株安」の関係に移り始める可能性がある。

株価は依然として高値圏にあるが、原油高と株高が共存する期間はそれほど長くはない。これまで米国株はきわめて強い動きだったが、今年は大統領選挙を控えていることもあり、不安定な値動きになりやすい。今回、原油相場が本格的に戻すようであれば、株価の上値もそろそろ限界的になると考えている。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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