iPhoneロック解除が示したアップルの「弱点」 肝心な製品セキュリティ部門が揺れている
米政府はカリフォルニア州で起きた銃乱射テロ事件の容疑者が使用していたiPhone(アイフォーン)から、アップルの助けを借りずに情報を取り出すことに成功した。これに伴いアップルは今、そのセキュリティ上の欠陥を見つけ出し、修正することを迫られている。
しかし、欠陥が発見された他のケースと違い、ハッキングに成功したのが政府だったため、アップルにはより大きな困難が待ち受けているだろう。
不安定なセキュリティ部門
アップルにとって一つ目の障壁は、昨年12月にサンバーナディーノで起きたテロの容疑者サイード・ファルークが使用していたiPhoneのロック解除を、連邦捜査局(FBI)が第三者の協力を得てどうやって成功したのかが不明なことだ。当局は、協力した個人もしくは団体名、その具体的な方法についても明らかにしていない。
状況を悪化させているのは、アップルのセキュリティ部門が不安定な状況にあることだ。アップルの元社員4人と現役社員が匿名を条件に語ったところによると、政府によるデータ抽出の要請を担当していたマネジャーが異動し、同部門は昨年末に再編成された。
彼らによれば、他にも同部門の複数の社員がこの数カ月内に退社。その中には自社製品のハッキングを業務として行っている社員もいたという。一方で、新たに加わったメンバーもいる。
現在の状況は、アップルが日頃ハッカーと繰り広げているいたちごっこと似ている点も多いが、今回のケースは世間の関心も高く、そしてセキュリティを破ったのが米政府であるということが、同社を苦境に立たせている。
「企業としてアップルは、顧客からの信頼を得なければならない」と、セキュリティ対策企業サイナックCEOで、国家安全保障局(NSA)の元アナリストのジェイ・カプランは言う。「アップルはこの脆弱性を修正できることを早急に示す必要がある」