金正日の遺言 井野誠一著
後継者問題が改めて注目されている北朝鮮の金正日総書記。本書は金正日ファミリーの人間模様、政治実態を丹念に追ったインサイドストーリーだ。
本書では、金総書記は「遺言」を作成しつつあり、後継者の名もすでに記したとする。三男の正雲に内定との報道もあるが、本書では断定を避け、長男・正男が「本家の長男」として担ってきた役割にも目配りする。第一候補に何か不都合があれば、金総書記はためらわずに遺言を書き直す、判断基準は何よりも金ファミリー支配体制の維持だ、というのが著者の結論。同時並行で事態が動き、情報も錯綜する中、やや歯切れが悪い面があるのはやむをえないだろう。
とはいえ、核開発と対話という硬軟両カードを使い分ける北朝鮮外交の根底にあるのも、まさに金ファミリー体制の維持。その「実体と“生理”」(本書まえがき)を知ることは、日本の外交、安全保障を考えるうえでも有益だろう。
朝日新聞出版 1470円
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