ヨーロッパのデモクラシー 網谷龍介、伊藤武、成廣孝編 ~「EUプラスα」の現実から現代日本を考える

ヨーロッパのデモクラシー 網谷龍介、伊藤武、成廣孝編 ~「EUプラスα」の現実から現代日本を考える

評者 学習院大学法学部教授 野中尚人

 本書は、中堅・若手の研究者による共著である。学術的な要素もちりばめられており、その分厚さと文字の詰まったページを見ると、ちょっと手強いかな、という第一印象を持つ方もいるかもしれない。しかし、種々工夫があり、必ずしも取っつきにくくない構成になっている。

まず紹介しておきたいのは、いくつかのコラム風の解説や情報欄である。たとえば「ベルギーはもはや存在しません」では、フランス語圏とオランダ語圏との対立が抜き差しならなくなってきたベルギーで、フランス語圏の公共放送RTBFが、ゴールデンタイムのニュースで「フランデレンがただいま独立を宣言しました」という「ニセ」の速報を流した事件のことを採り上げている。これは、エイプリルフール顔負けの大胆で用意周到な「やらせ報道」だったわけだが、北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏との対立がいかに深刻かということを、実に鮮烈に感じさせてくれる。

もう一つは「スウェーデンの選挙」である。スウェーデンでは、4年に一度、9月の第3日曜日に選挙が行われる。国政選挙だけでなく、地方議会の選挙も同時である。首相の解散権という大事な論点とも絡むが、同国の投票率が減少傾向とはいえ依然として80%を超えていることは、一定の効力を意味しているかもしれない。

さて、本書の大きな特色は、ヨーロッパのほとんどの国と地域をカバーしていることである。東欧の東部とロシア、それに旧ユーゴのバルカン諸国を除けば、比較的最近国家として成立したバルト3国や、2007年にEU加盟を果たしたばかりのルーマニアやブルガリアも対象になっている。

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