「女性向けアダルトビデオ」の幻想と現実 肉体を男に触れられないヒリヒリとした欲求
女のオナニーは殿方たちの大好物である。アダルトビデオでも綺麗な女性が自分の身体をまさぐり、絶頂を迎えるというのは定番のシーン。ちょっとハメをはずすような日常の場面では、エロジジイが鼻の下をのばして女子たちに「普段オナニーするの?」なんて聞く。
女の私でも、女のオナニーがなんかエッチな感じがするのはわかります。何より、女にとっては排泄と同じくらい見られたら恥ずかしいそれは、一般社会ではとてもとても秘められたところに存在するから。非童貞の殿方は、女のセックスしてる場面は生で見たことがある、ということになるが、女のオナニーしてる場面は彼女や風俗嬢に頼んで実演してもらうくらいが関の山、なかなか覗けるものではない。
「エロメン」と呼ばれる人気のAV男優たち
と、いう事情もあるのかないのか、「女性向けAV」というものの存在は、かつて男の愉しみとして広く定着していた「AV」を男性という枠から解放したようなフリをして、一時多くのメディアに取り上げられた。現在も「シュガール」「エッチネット」など、オンナノコのためのアダルト動画サイトでは、「エロメン」なんて呼ばれる女性に人気のAV男優たちがフィーチャーされている。
2000年代なかばに、雑誌『an・an』が取り上げたことでなんとなくそんなものがあるのだろうというくらいには市民権を得た女性向けアダルト動画は、男性向け、と言うまででもない従来のAVと無理やり差異化するとすれば、ストーリー性が高く、セックスそのものの描写よりもキスや愛撫が長く、男性が端正な顔立ちで、ものによっては女優よりも男優の顔が長く画面に映し出される。
最も知名度の高い鈴木一徹主演のものなどは男性のアップ写真がパッケージに使われているものすらある。男性向け、とあえて言うが、従来型AVが男の妄想するシチュエーションを繋ぎあわせているとすれば、女性向けでは恋愛漫画さながらの台詞やプロットが、女性のワタシタチから見ると男向け作品よりも「見ていて恥ずかしい」。