中国研修旅行-厳しい北京の環境と、内向きなアメリカ人学生《若手記者・スタンフォード留学記 31》
私などは、アメリカで英語がさほどうまくないマイノリティーとして生きていますから、こういう傲慢さは鼻につきます。「どうして、英語を話せない現地の人に優しくできないのか。どうして、英語を勉強せず、現地語のみで必死に生きている人間がいることを想像できないのか」と思ってしまいます。
アメリカ人は言葉に不自由せずに、他者の言語に合わせる必要なしに、一生を過ごせる恵まれた立場にあるのに、一生に数回の旅においてすら、自分の自我をおさえられない。相手が自分に合わせて当然だと思っている。その優しさというか、想像力の欠如に、あきれることが度々ありました(これまでの私の経験だと、ヨーロッパの人間の方が、アメリカ人より協調性や柔軟性がある。傲慢なところはあまりない)。
イラクにおける失敗や、サブプライムローンによる混乱など、すべては他者に対する想像力の欠如から来ているのではないかという気がします。こんな貧乏人に、むりやりローンを貸したら、将来問題になることは、誰でも常識で考えればわかるはずです。
日本でもバブル時代に、ある種の倫理の退廃が起きましたが、現在、アメリカが抱える問題も、単なる金融システムの混乱にとどまらず、本質は、アメリカのモラル、倫理の退廃にあるような気もします。
今回の旅行でも、在米経験のある中国人の学者が、諭すようにこう語っていました。
「アメリカ人はおとぎ話の中に住んでいる。アメリカのような豊かな国は世界の例外。むしろ、今あなたたちが中国で見ている光景が、世界の現実に近いのですよ」
佐々木 紀彦(ささき・のりひこ)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2007年9月より休職し、現在、スタンフォード大学大学院修士課程で国際政治経済の勉強に日夜奮闘中。
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