リベラルアーツ教育の最後に「進化論」を学ぶ意味 コロンビア大学教養講座が伝える「学びの核心」
『教養としてのギリシャ・ローマ:名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』を上梓した中村聡一氏が、リベラルアーツを学ぶ意味やアメリカのエリート教育を支える根本理念について解説する。
人間修養のためのトレーニング
最近は日本でもリベラルアーツ教育の必要性が認識されるようになりました。優秀な人材を次々と輩出するアメリカのエリート教育の源泉が、このリベラルアーツ教育と考えられているからです。
アメリカの名だたる大学の中でも、コロンビア大学は「リベラルアーツ教育の総本山」と形容されます。これは、同大学が第1次世界大戦後にいち早くリベラルアーツ教育に取り組み、100年以上にわたって進化を重ねた結果です。
ジャンルとしては「哲学」「宗教」「芸術」「サイエンス」の4分野がありますが、教えるのはその専門技術ではなく、歴史も含めた成り立ちや思想です。それだけのことを教えられる教員が質量ともにそろっている大学は、世界にそう多くはありません。それがコロンビア大学の優位性であり、言い換えるならリベラルアーツの真髄を知る人は世界でもごく少数に限られるのです。
それらの授業で展開されているのは、一般教養というより人間修養のためのトレーニングです。たとえばスポーツにしても、趣味として楽しむだけならともかく、一流のプレーヤーを目指すなら厳しいトレーニングは欠かせません。人間そのものも同様で、トレーニングなくして一流にはなれません。
したがって、授業は何か特定の「知識」を得るためのものとは位置づけていません。まして、「実生活で役立つノウハウ」を教える意図もありません。即物的な交換価値ではなく、ワンランク上の人間になるための試練であり修行なのです。
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