規制強化は金融情報の新たなニーズを生む--ブルームバーグCEO ダニエル・ドクトロフ
世界の金融・資本市場の取引高は、ユーロ危機の長期化などを映して低調に推移している。そんな中、金融情報サービス大手の米ブルームバーグの業績は昨年来、順調だという。どこに戦略の強みがあるのか--。来日した同社のダニエル・ドクトロフ最高経営責任者(CEO)に聞いた。
──昨年来、快進撃が続いているようですね。
足元は良好だ。去年の売上高は前年比11%増。今年も同7%前後のプラスを見込んでいる。運用や証券関連の業界が厳しい状況に直面している中で、この数字を上げることができるのは誇らしいことだ。
--リーマンショックやユーロ危機などを背景に金融市場の流動性が低下する中、金融情報産業にとっては逆風が吹いているのではないですか。
厳しい状況を目の当たりにして、多くの投資家が従来にも増してリターンの向上を追い求めている。そうした流れの中で、金融情報へのニーズが膨らんでいるのだ。
これまで、世界各国でプロダクト(商品)に対する大規模な投資を続けてきたことも、市場シェア拡大につながった。一例を挙げると、全世界で約100人のリサーチ・アナリストを採用し、分析に必要な情報やデータを集約したダッシュボードのような新規プロダクトを北米で投入した。これにより、これまでは十分に訴求しきれていなかった、投資銀行やプライベートエクイティ(非上場企業への投資)などの新しいタイプの顧客を獲得することができた。
ポートフォリオの特性やリスク分析に役立つツールの提供も開始した。厳しい運用環境下では有用なサービスだ。先進国の証券業界人口はこの5年、まったく増えていない。しかし、当社の同業界への浸透度合いはむしろ、高まった。新たな取り組みがプロダクトの価値向上に貢献しているわけだ。
これに伴って、会社の規模も膨らんでいる。2008年末の社員数は約1万0600人だったが、現在では1万5000人超を数える。セールスチームの人員は同年末に比べると4割増だ。ニュース部門で働く人も増えた。同部門が拡大しているのは、世界中のメディアの中でも珍しいケースだろう。