そもそも、保護貿易は経済安全保障に資するのだろうか。戦後、グローバル化とともに追求されてきた自由貿易には、それが経済安全保障に適うからこそ追求されてきたという経緯がある。外生的な供給ショックが生じても、自由貿易であれば、価格メカニズムを通じた調整が働くため、他の調達ルートからの調達がスムーズに行われることになるからだ。
自由貿易こそが紛争の抑止力になる
自由貿易の追求は、戦間期における保護貿易やブロック経済の負の教訓に基づく原則でもある。政治的にも、自由貿易で経済的な相互依存を強めたほうが戦争や紛争が抑止されることは明確だ。そもそもこの発想から、欧州の単一市場は組成されたはずだ。時代の揺り戻しとはいえ、貿易を管理する発想は危ういと言わざるをえない。
それに、保護貿易は市場介入であるから、自由貿易での取引に比べると、価格は間違いなく上振れする。そのコストをどう負担するのか、そもそも負担できるのかという重要な論点がある。これについて、議論を軽視したままに政策が運営されているのがEUの現状だ。
それは既往の脱炭素政策や、脱ロシア産エネルギーの取り組みを振り返って明らかなところである。
EUは結局、自らにとって望ましい動きを自由主義と位置付け、望ましくない動きを保護主義と位置付けているのではないか。
そうしたシニカルな見方が一定の説得力を持つほど、EUの政策運営はご都合主義である。ご都合主義という意味ではアメリカと大して変わらないし、経済力に劣る分だけ、EUはアメリカ以上にご都合主義的だといえる。





















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