「国際バカロレアって何?からのスタートだった」、定期テストなし・探究学習を全面導入…北海道鹿追町2つの中学校"IB認定"の裏側

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「保護者の心配は、まずは基礎学力の問題です。しかし北海道独自の学力テストでも、MYP導入前と後で学力が下がっているという結果にはなっていません。従来の知識だけを問うようなテストでは、一斉授業のほうがいいのかもしれません。しかし応用問題のような思考力、表現力を問うようなテストでは、MYPのやり方が効果的だと思います」

ただ知識だけを問う学力から応用力を問う学力へと、日本の教育は動き始めている。そうした流れの中にあって、従来型の授業に固執するほうがリスクが高まっていくはずである。

「何より、生徒たちの変化が保護者の理解につながっていると思っています。MYPを導入してから、生徒たちが積極的に動いているし、発表の仕方も上手になっています」

そう言ってシンボ氏が紹介してくれたのは、ある中学3年生のエピソードだった。

その生徒は、自分が受験したい高校と母親が薦める高校が違っていたという。従来なら自分が志望する理由をうまく説明できず、母親の薦める学校を「嫌だ」の一点張りで拒否するだけだったはずだ。

そうなると、お互いに意地の張り合いになって学校に相談が持ち込まれるというのは、これまでにもよくあるパターンである。

しかし、その3年生は「なぜ自分がこの高校に進みたいのか」を説明するプレゼンテーション資料をつくり、母親の前で発表したという。それに母親は納得し、本人が希望する高校を受験することになったらしい。シンボ氏が続ける。

「MYPで学んでいるからこそ、できることです。この話はお母さんから聞いたのですが、『うちの子は変わりましたよね』と喜んでいました」

鹿追町の中学生たちが変わり成長している…

こういう例がたくさんある、ということではない。鹿追町の中学校でMYPの授業が始まったのは24年4月からのことで、短期間で全部の生徒がガラリと変わるわけでもない。

「何かの点数がこんなに上がりましたよ、と見せられたら楽なんですが、個人の成長ははっきりと目に見えることばかりではありません。でも、鹿追町の中学生たちが変わり、成長しているのは確かです」と、シンボ氏は言う。

鹿追町でMYPがしっかり根付いていくためには、教育委員会や学校のさらなる努力と試行錯誤が必要なのだろう。そして鹿追町全体でMYPを支えていくためには、保護者だけでなく、地元の理解を深めることも不可欠である。

「私も、いろいろなところでMYPを理解してもらうための話をしています。先日も、地元の老人クラブで話してきました」と、シンボ氏。

自分の頭で考えて判断し、表現できる力を養うことを重視するIBのMYPを教育の中心とする鹿追町の挑戦は、全国の学校に大きな影響を与えていくかもしれない。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
前屋 毅 フリージャーナリスト

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まえや つよし / Tsuyoshi Maeya

1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など。

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