波紋を呼ぶ「探究学習の《大学教員に協力依頼》」、「学習指導要領・解説」に記載の"外部との連携"は必要か?博士号を持つ高校教員が今思うこと

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また、依頼した相手の状況によっては多忙な時期に重なることがあるということも踏まえ、依頼内容を考える必要があるでしょう。

本校では、一部のグループの探究活動に対して大学院生が助言役(メンター)に付いてくれています。その大学院生には日常の実験の考察に対する助言だけでなく、学会に応募する際の要旨やスライド、ポスターなどの資料を添削してもらうこともあります。

大学院生は自身の日々の研究や試験、就職活動や卒業(修士)論文などが並行してある中で見てくれていますが、「明後日までに添削をお願いします」のように、高校生は相手の都合を考えず無理な依頼をしてしまうことがありました。

このようなことを防ぐ意味でも、事前に高校生と高校教員との間で十分な打ち合わせをすること、特に「自分がそのような依頼を受ける立場だったらどう思うか」と指導することは重要です。

外部との連携が「余裕」を生み出すわけではない

学習指導要領・解説には、次のような記載もあります。

教員以外の専門スタッフも参画した「チームとしての学校」の実現を通じて,(中略)時間的・精神的な余裕を確保したりしていくことなどが重要である。

これは、外部との連携を行うことで効果的な指導が実現し、学校現場の負担が軽減することを意味しています。しかし、外部との連携の窓口となる教員の負担や、これまでに述べた外部連携に伴って必要となるさまざまな指導が生じることを考えると、外部との連携が必ずしも「時間的・精神的な余裕」を生み出すとは限りません。連携すること自体が目的化してしまい、かえって教員の負担が増す可能性すらあります。

外部の連携先についても同様です。今回は大学の教員との連携を主軸に説明をしましたが、高校との連携に時間や労力を使うことによって、本業である大学の学生の教育や研究に従事する時間は確実に減ります。

企業や地域住民との連携でも同様であり、外部人材はそれぞれ日常の業務や生活がある中で高校生の教育の一部を担当してくれることになります。教育は未来の日本の産業の成長やよりよい社会の実現につながるため大変意義のあることではありますが、短期的には大学の研究力や企業の生産性、人々の生活の質というコストを消耗させているのだということを十分理解すべきだと思います。

同時に考えるべきは、そのコストに対する対価です。総合的な探究の時間に限らず、高校はさまざまな場面で外部との連携を行っています。しかし多くの場合、このような連携に対して謝金等の予算はなく、無償のボランティアで支えられています。

学習指導要領・解説に示されているように、外部人材との連携は進め方によっては教育効果を発揮する可能性があります。しかし、効果があればそのためには無尽蔵にコストを投じてもよいのかというとそうではないと思います。

実際、生成AIが発展してきた現在では、これをうまく使うことによって探究活動を十分効果的に進めていくことができるようになりました。高校側、連携先ともに無理のない範囲で、コスト対効果をしっかり考え、本当に必要なときのみ連携を行い、その場合は必要な手順を踏むということが大切であると考えます。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
遠藤 金吾 秋田県立秋田高等学校 教諭

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えんどう きんご / Kingo Endo

埼玉県出身。東北大学農学部卒業。東北大学大学院生命科学研究科博士課程前期・後期修了 博士(生命科学)取得。東北大学加齢医学研究所科学技術振興研究員を経て、2008年より秋田県の博士号教員。2016年より現任校に勤務。専門は「DNA修復と突然変異生成機構」

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