「満足度96%」に見る、上智地球市民講座の真の価値 不確実な世界を読み解く「知の羅針盤」の全貌

世代を超えて支持される「知の交差点」がアップデート
2024年にスタートした上智大学の「上智地球市民講座」が、わずか2年で受講生累計2000名を突破した。中学生から80代まで、幅広い世代が集う学びの場。その特筆すべき点は96%(2025年度春学期受講生実績)という極めて高い満足度だ。
なぜ、これほどまでに幅広い世代がこの講座にひきつけられるのか。それは、知識の習得を超えた「生き方のデザイン」というアプローチにあると副学長の神澤信行氏は話す。
社会連携担当副学長
理工学部
神澤 信行教授
「社会情勢の変化や技術革新により、人々の働き方、学び方、暮らし方は急速に変化しています。上智地球市民講座は、そんな社会に生きる一人ひとりが『地球市民』としての生き方を前向きに捉え、自身の成長を促進させる学びをコンセプトにしています。
受講生は国内外で同時進行する多様な事象と向き合い、世代や価値観の異なる受講生同士で議論を重ねることで、『自分はどう生きるのか』を考えるきっかけを得られます」
講座は対面型・オンライン型・ハイブリッド型(対面とオンラインの同時開催)の3形態を用意し、首都圏だけでなく北海道から沖縄、海外の受講生まで参加が広がっている。
受講後には「バックグラウンドも年齢も異なる人とのディスカッションが非常に有意義だった」「働くうえで、生きているうえで何を大切にしたらいいかを改めて考えるきっかけになった」と反響が多く寄せられるという。

こうした受講生からの支持と、変化し続ける社会の要請に応えるべく、2026年度、上智地球市民講座は新たなフェーズへと進化する。目指すのは、より多様な人々がアクセスしやすく、かつてない深みのある学びを得られる場だ。
刷新の柱となるのは3つの講座群である。従来のスタイルを継承しつつ新たに英語クラスを加えた「スタンダード講座」、1回完結で時事問題を扱う新設の「トピック講座」、そして複数の専門家が多角的にテーマに切り込む「スペシャルオムニバス講座」だ。
とりわけ「スペシャルオムニバス講座」は、全学部がワンキャンパスに集う上智大学の強みを最大限に生かした設計となっている。「国際紛争解決」や「AIとの共存」といった複雑なテーマに対し、歴史・技術・経済など異なる分野の専門家がさまざまな角度から光を当てることで、立体的な視座を提供する。
神澤氏は、このアプローチがもたらす本質的な価値について、次のように強調する。
「現代の社会課題は極めて複雑で、単一の専門分野だけでなく、異なる領域の知見を『つなげて考える力』が解決には不可欠です。アップデートした地球市民講座で得られる多角的な視点は、世界で起きていることを自分ごととして捉える力を養い、人生そのものに厚みと彩りを加えることにつながります。それは単なる学び直しではなく、生涯にわたって自らの生き方をデザインし続けるための、創造的なプロセスとなるでしょう」
アカデミアの最前線にある「知」と、多様な受講生が持つ「経験」が双方向に交錯する場。年齢や背景に関係なく、講義やディスカッションを通じて「自分の生き方」を突き詰められるところに、上智大学ならではの価値がある。
名著を介した英語での対話で、人生の深淵に触れる
4月からの講座では、新たな試みとして講義がすべて英語で行われる講座「名著と人生:英語による読解と思考」も開講する。受講生から英語による講座について多数のリクエストが寄せられていたことを受け、新設されたプログラムだ。
担当講師を務める国際教養学部のアンジェラ・ユー教授はそのコンセプトを、「英語を通じて『知』を読み解き、名著を媒介に共に考え、受講生が自らの人生と対話すること」だと説明する。
国際教養学部
アンジェラ・ユー教授
「講義で重視するのは『名著と自分の人生との距離』です。名著の醍醐味は、長い年月を経てなお、新たな意義が発見され続ける点にあります。しかし、自らの人生との接点がなければ、読んだとしても単なる情報の受容に終始し、学びが血肉化することはありません。名著の真の意義とは、読み手自身のリアクションや対話というプロセスを経て、初めて完成するものだといえます」
講義では、聖書に由来するテキストやギリシャ神話・哲学、哲学書の英訳、ヨーロッパ文学などを題材に、できるだけ1回で読み通せる名著を扱う。難しい箇所があれば、むしろ授業の中で立ち止まり、受講者と一緒に解読しながら考えていくという。
「まずは短い物語を5〜7割読むことを目標にしつつ、読み進めながら調べるプロセス自体を楽しむことを目指します。自分にも読めたという手応えを少しずつ積み上げることが大切です」
さらに、特徴的なのはグループディスカッションを通じて考えをアウトプットする場を設けていることだ。こうした対話を英語で行うことに不安を抱く受講生もいるだろう。だがユー教授は、「完璧な英語」で話す必要はないと語る。
「英語で表現する際、言葉に詰まってもいいし、日本語が混ざっても構いません。大切なのは、『完璧でなければならない』という呪縛から自分を解放することです。不完全さを受け入れたうえで、それでも表現し続ける。その姿勢こそ、いまの社会でいちばん重要なのではないでしょうか」
過去の講義では、カフカの『変身』のような時代を超えて読み継がれる作品を扱った。15歳から58歳までの受講生が同じテーブルを囲み、ある日起きたら虫になっていたという物語に、15歳は将来への不安を重ね、年配の受講者は介護や病といった現実として受け止める。ユー教授は対話の「導き手」として、書物を通じて各人の経験が意味を帯びるよう促していく。
「学びの本質は『磨くこと』にあります。英語で名著と向き合い、受講生と対話することで、自分の中にもともとあるものを取り出して磨く。それは新しい自分の発見であり、若い頃の自分との再会でもある。人生を肯定するためのプロセスなのです」
複雑な社会を生き抜く「知の筋力」を鍛える
物事に対し疑問を持ち、自ら問いを立てる。一見、当たり前のように思えるこのプロセスこそが、不確実な時代を生き抜くための教育であり「トレーニング」である。神澤氏は、上智地球市民講座を通して多角的な視点を得る意義を次のように語る。
「目の前にある事象に対して疑問を持ち、問いをかけ、あらゆる角度から熟考する『思考のロジック』は、経験したことがなければ動かせないものです。実際のケーススタディを通じて、この思考のロジックを習得することこそが、個人の揺るぎない力へと変わっていきます」
この思考のトレーニングを積むことで、日常生活で触れる情報の解像度は劇的に変化する。例えば、国際紛争のニュースに接した際、かつてなら「かわいそう」という一過性の感情で終わっていた事象も、異なる視点から見ればまったく違う形で見えてくる。
「かわいそうという感情の先に、なぜそうなったのかという問いを持つことで、身近な問題から世界情勢に至るまで、多角的な背景を読み解く習慣が人生に深みを与え、選択肢を広げることにつながります」
こうした学びの背景には、上智大学が掲げる「生涯を通じて学び続ける」という基盤教育の理念がある。変化の激しい現代において、専門性を突き詰めるだけでは常識の枠から抜け出すことは難しい。異なる専門性をつなぎ合わせる「学際的な学び」こそが、難題を生き抜くための武器となる。
知の交流を通じて視座をアップデートし、自らの人生を主体的に彩っていく。上智地球市民講座は、学びが「個の豊かさ」へと直結する、新しい教育のあり方を提示している。

上智地球市民講座
2026年度春学期の募集について
・申込締切:各講座の初回講義日の2週間前まで
・申込先:上智地球市民講座公式サイトからweb申し込み
※講師等各講座の詳細は公式サイトに記載しています。



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