東京都「学校のカスハラ対策」公表は誤解?学校は「理不尽な保護者」でも排除できない、"良好な関係づくり"前面に出す訳…結局は現場任せか
「教員に対するアンケートでも、『過去5年間に通常の社会通念から疑問と感じる行動や行為を受けた』のは22%です。そういう保護者との対応を、教員全員が毎日のようにやっているわけではありません。基本的にはレアケースだと思っています。レアケースだからこそ、対応する指針が必要だというので示したのが今回のガイドラインです」
22%を少ないと見るのか、または多いと見るのか、人によって見方は違うかもしれない。さらには、22%という調査結果が本当に現実を表しているのかも、これも見方の分かれるところかもしれない。

文科省が24年12月20日に公表している「公立学校教職員の人事行政状況調査」によれば、23年度に精神疾患で休職した公立学校の教員は7119人にのぼり、初めて7000人を超えた。その要因には多忙やパワハラもあるが、保護者対応もある。
筆者も、保護者対応で精神疾患に追い込まれ退職した元教員を何人か取材したことがある。「子どもに対する指導で、“うちの教育方針ではない”と主張されて話し合いにならない、平行線のままズルズルと話は長引き、困り果てました」という元教員もいた。
その元教員は、それが原因で精神疾患と診断されて薬を服用しながら勤務を続けようとしたものの、結局は退職してしまった。
そういう例も、レアケースとして片付けてしまっていいのだろうか。そうした保護者に対応するための学校の体制づくりは、絶対に必要である。ただし「やり過ぎ」では、不必要に保護者との関係を悪くしてしまう可能性もあり、難しいところだ。
学校現場が望んでいることとは
今回のガイドラインは、案も素案も有識者会議に示されたもので、ここでの議論を踏まえて確定する。案が示されたのは11月6日の第4回有識者会議で、素案は12月2日の第5回有識者会議である。ガイドラインについての有識者会議の反応はどんなものだったのか、教育庁の松永氏に聞いた。
「ガイドラインをつくること自体がチャレンジングなことなので、『まず、つくってみる』ことを評価してもらいました。つくってみて、問題があれば直していくということです。内容について、『ここは絶対に直せ』といったご意見はいただいていません」
都教委にしても有識者会議での議論でも、学校におけるカスハラ案件(モンペ案件)が問題になっているので、そうした案件を減らすためにガイドラインをつくるということではなく、必要であればガイドラインを利用すればいい、といったスタンスでしかない。それよりも、ガイドラインが必要な場面にならないように「良好な関係づくり」を優先するという考え方である。
確かに良好な関係を早急に築ける効果的な策があれば、ガイドラインは必要ないのかもしれない。しかし、学校でカスハラ案件が起きているのも事実だ。その対策を、学校現場は望んでいるのではないだろうか。
12月2日には大阪・堺市の中学校校長が、弁護士も不当と認める保護者からの要望を拒否したものの、堺市教育委員会から保護者の要望に応じるよう繰り返し指示を受けてうつ病になったとして、330万円の慰謝料を求める訴訟を起こしている。教育委員会は、保護者とのトラブルを避けることを優先しているようだ。
せっかくガイドラインをつくっても、都教委も学校より保護者を優先する姿勢なら、学校現場は安心して保護者対応することはできない。ガイドラインがあることでかたくなな対応になってしまい、かえってトラブルを増やしてしまう懸念すらある。学校現場として求めたいのは、ガイドラインよりもモンペから学校を守る都教委の明確な姿勢と施策ではないだろうか。
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