これは映画だ! 藤原帰一著
国際政治学者が『アエラ』に5年にわたり連載した洋画を中心とする映画評226本、300ページは壮観で、興味の持てそうな映画だけ拾い読みと思ったが、駄作でさえもそれぞれ個性的な批評でつい読み進んでしまった。10代半ばから映画館に足しげく通って40年、気に入れば何度も繰り返し見たその蓄積はだてではなく、演出、脚本、撮影、音楽、俳優たちへの眼識は単なる映画ファンの域をはるかに超えている。映画一本一本を古今東西何千本との比較の中で多彩に論じる様にはただ感服の一語だ。
批評にレトリックのスパイスが効き、毎回、締めのひねりが楽しめる。ニヤリとすること再三だし、考えさせられもして、10本に8本は見たくなってしまうのは困るが、「映画をよく見ているときのほうが仕事もできた」という著者のひそみに倣おうか。最も頻繁に登場する旧作が『カサブランカ』、新作は『ノーカントリー』。『僕の洋画200本』の出版が待たれる。(純)
朝日新聞出版 2100円
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