令和に都心と地方の教育格差が広がっているのはなぜ?「北海道の平均年収=400万円台」「道内1位の私立大学=偏差値約40」に見る当然の理由

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――なるほど。つまり「学歴より安定」「進学より就職」という価値観がいまだに強いわけですね。

山崎さん:そうなんです。そしてこれが個人的に一番の問題かもしれないと思っているのですが、北海道の高校入試制度が、1970年代後半から基本構造が同じで、ほとんど変化がないという教育行政の問題です。

たとえば、東京では石原都知事の時代に都立高校改革が進み、公立中高一貫校の整備や、トップ校の明確な目標設定が進みました。茨城県でも、県立の進学校を一気に中高一貫化しています。しかし北海道は、公立中高一貫校が全道で2校しかない。人口500万人の道内に2校しかないんです。

――それは驚きの数字ですね。

山崎さん:もともと北海道の公立高校入試は内申点重視で、チャレンジがしづらい仕組みです。一度「この学校にしなさい」と決められたら、もう動けない。結果、競争も刺激も生まれず、努力する動機が失われていく。本来なら「挑戦すること」そのものが学びなのに、制度と慣習がそれを奪っているように感じています。

そして、そういうシステムの中で育った生徒が教師になり、また次の世代に同じ指導をする。これが北海道の“構造的な教育停滞”の正体だと思っています。

「上」を目指す意欲が少ない

――なるほど。文科省のデータを見ると、北海道の中学3年生のうち英検3級相当を取得している生徒が17.6%しかいません。行政が英語スピーキングを入試に導入したさいたま市では78.3%。他に高い地域は福井県78.8%、東京都が43.5%ですが、これらの地域も英検の取得を推奨していますよね。行政が動くと変化するというのはおっしゃる通りだと思います。

山崎さん:生徒も、「上」を目指す意欲がかなり少ないですね。北海道の公立高校の倍率は他の地域に比べても低く、公立トップの札幌南高校でも倍率1.5倍にはほとんどなりません。せいぜい1.3倍程度。指導していて、「君、札幌南高校目指せる学力があると思うよ」と言っても、「いや、自分はそこまでは……」とやる前から諦めるというよりも考えにも入ってこないことが多いです。「道内の大学に進学できればいいから、札幌南なんていいよ。親もそう言ってるし」と。環境の影響の大きさですよね。北海道の中だと、札幌はまだそれでも教育に熱心な親御さんもいらっしゃいますが、地方部ではなかなかそういった機運がないというのが正直なところです。

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