――北大は偏差値60以上とされていますから、非常に大きな乖離があると言わざるを得ませんね……。そりゃ、道内で大学進学を目指すのであれば、北大は目指しにくくなってしまいますね。
山崎さん:この道内志向は、経済的な面による部分も多いと思っています。厚生労働省の発表によれば、北海道の平均年収は400万円台です。総務省のデータでは、年収1000万円以上の世帯は北海道内には3〜4%だと言われています。
経済格差が教育格差と結びついている
――東大の学生実態調査のデータを見ると、世帯年収950万円以上の家庭が半数近くを占めると言われていますよね。そう考えると、かなり年収としても差が大きいですね。東京の物価は高いですし、道内進学でなければ経済的にきつい、という状況もありそうですね。教育に投資するといっても、400万円台の家庭で年間50万円程度の塾・予備校代を払うのは難しいですよね。
山崎さん:それでも他の地域であれば、親のさらに上の世代・おじいちゃんやおばあちゃんが孫のためにお金を出す、なんてこともあるでしょうが、北海道はそういった文化は形成されていません。塾を経営していても、そういったことは本当にレアケースです。やはりそもそもの文化的な価値観から言って、教育は子供の将来にきわめて有効な効果の大きい投資であるという感覚がかなり薄いんですよ。
――経済格差が教育格差と結びついてしまっていて、教育格差がまた次の経済格差を生む、ということなのかもしれませんね。函館だと、高校を選ぶときに、函館中部高校(北大合格者が年約20人・東大合格者も年1~2人程度出る高校)か、函館工業高等専門学校(函館高専)で悩む学生が多いと聞きます。もちろん函館高専から北大に進学する人もいらっしゃいますが、しかし基本的には就職が前提ですよね。高校時点での学力が高くても、大学の進学にこだわる選択肢を取っていないということになるわけですね。
山崎さん:そうですね。正直に言えば、親の教育に対する価値観に大きな違いがある。就職が安定している、地元に残れる、そういう価値観が強い。都市圏のように「大学に行って学びを広げよう」という意識とは根本的に違うんですよ。
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