信頼失墜「会員100万人減」、相次ぐ退会で揺れる日本PTA全国協議会の迷走…その傍らで新たに生まれた全国組織とネットワークの存在意義

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これまで日Pは、PTAの全国組織として唯一の団体だった。しかし23年1月、新たに「一般社団法人 全国PTA連絡協議会」(以下、全P)が誕生した。

日Pは、日Pを頂点として都道府県P連、市区町村郡のP連とつながる階層的な組織であるが、全Pは、いわゆる「上部団体」ではなく、P連や各校のPTAとフラットにつながりPTA活動をサポートする組織だ。会費納入の必要もない。

PTAの全国組織

主な事業として「時代に合ったPTAに近づくための情報共有」「インフラ導入、会費決済、ネットバンキングサービス提供などPTA運営支援」「ICT導入、活用支援」「保険、補償制度の提供」「オンラインセミナーや相談室の開催」などを掲げ、25年9月現在、18のP連、2024校のPTAが会員登録している。その数は日Pとは対照的に、年々増加傾向にある。

PTAの全国組織として大きな役割に、「全国の保護者の声を集め、国に届けること」が挙げられる。日Pの求心力の低下に拍車がかかりつつある今、全Pとしてこの課題に取り組む姿勢はあるのか。同協議会代表理事の長谷川浩章氏に聞くと、「これまでの事業に加え、今後は調査研究事業を強化していきます」という答えが返ってきた。

「市区町村や都道府県レベルのPTA連合会は、地域の実情に合わせて教育委員会と直接対話を行うなどの取り組みを行っています。しかし全国組織になると、これまで国の審議会に全国組織の役員が出席してきたこともありましたが、『全国の保護者の声がどう反映されたのかが不透明だ』という声もありました。そこで私たちは、この課題を解決するため、25年9月より調査委員会を設置し、保護者の声を国に届けるための調査研究事業を強化していきます」(長谷川氏、以下同じ)

第1回の調査テーマは、「部活動の地域展開について」。教員の働き方改革や少子化などを背景に、部活動を学校ではなく地域での活動に変えようとする動きが国主導で進みつつあるが、保護者や教職員、部活動関係者はこれをどう受け止めているのか。同協議会のプラットフォームを活用し、25年12月、インターネットによるアンケート調査を行う予定だという。

「26年2月には集計結果を公表し、文科省やスポーツ庁への提言を予定しています。今後は半年に1回程度の頻度で、学習費の補助、給食無償化、高校無償化などさまざまなテーマについて調査・提言していきたいと考えています」

このほか、人口20万人以上で政令指定都市に次ぐ規模の「中核市」のP連が運営情報を共有する「中核市PTAネットワーク」の活動サポートを行うなど、フラットなネットワークと具体的なサポート事業で、PTAの「今」に寄り添いながら着実に運営基盤を広げている。

新たなネットワークも誕生

新たな団体設立の動きもある。前述した千葉県PTA連絡協議会元会長の濱詰氏は、PTAの横のつながりを重視しながら情報交換や共有ができる場の提供、保護者の声を集めて課題解決を目指すNPO法人「PTAネットワーク日本」を25年秋に立ち上げるという。

「日Pに加盟しているかどうかにかかわらず、全国のP連や各校PTAさんからの相談に応じたり、情報交換ができる場を作りたいと思っています。コミュニティ・スクールの普及が進む今、私が目指しているのは、これまでのPTAのような『保護者と先生』の場ではなく、地域全体を巻き込み、みんなで課題を解決していく新しいPTAの形です」

相次ぐ不祥事により加入団体の退会が止まらない日P、そして旧来の組織構造とは一線を画す全Pなど新潮流の台頭。今後、PTAの全国組織が目指すべきは、組織の看板を守ることではない。会費や上下関係にしばられることなく、地域や多様な関係者と連携し、開かれたプラットフォームを築くこと、そして、保護者の声を見える形で社会に反映させていくことだ。

日Pが「失われた信頼」を回復できるか、あるいは新潮流がPTAの未来を担うか。いずれにせよ、問われているのは「誰が」「どの団体が」という主語ではなく、「いかにして子どもたちのために機能するか」。PTAの全国組織の未来は、組織の内側ではなく、その活動を必要としている保護者や学校、地域社会との関わり方の中にこそ見いだされるはずだ。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

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ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

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