信頼失墜「会員100万人減」、相次ぐ退会で揺れる日本PTA全国協議会の迷走…その傍らで新たに生まれた全国組織とネットワークの存在意義

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公益社団法人日本PTA全国協議会ホームページに公表された「金田淳氏との訴訟について」
日Pは和解内容に基づき、当時のハラスメント対策委員会の手続きに落ち度があったことを公表(写真:日Pホームページより)

しかし金田氏は、「裁判終了後、日Pからは何の連絡もなく、もちろん謝罪もありません」と言う。

「和解成立後の日Pの代表者会において、代表者より『金田氏への謝罪は行わないのか?』との質問に対し、日P側は『今回の和解に法的な責任はないので謝罪しない』と発言したと聞きました。法的な責任はなくとも、道義的な責任はあるのではないでしょうか」

子どもたちの健全育成を目的の1つにあげる日Pは、一連の問題を受け、会員に向けこれまでの経緯や改善策を説明するべき状況にあるにもかかわらず、そのような動きも見られないようだ。金田氏は、日Pの今後についてこう話す。

「『過去のことは忘れて前を向きましょう』では、組織の本質的な部分で何の解決にもなりません。過去に責任のある人が何のおとがめもないままでは、子どもたちに示しがつかず問題はくすぶり続けます。一日も早く私と日Pとの対話を実現させ、真に私との和解を全国のP連に周知し、新しい日Pとして再出発をアピールすることが、唯一残された道だと考えます。

また、不透明な部分の多い日Pの提携団体、とくに幹部OBが代表を務める一般社団法人地域創生応援団とは手を切ることが必要と思われます。OBには敬意を払うべきものと思いますが、営利活動に手を貸すのは誤りです」

冒頭で記した通り、関東を中心に多くのP連が退会し、現状として全国を網羅していない日Pは、国への政策提言やPTA間の連携など、本来の役割を失いつつある。

「毎年持ち回りで開催されている全国大会は一部の人しか恩恵を受けられず、一会員に、その内容は届きにくい状態です。形や開催形式を改善していく必要があります。日P退会の流れは、今後全国的に広がるでしょう。日Pは一刻も早く、根深く眠る確執やくすぶっている問題を解決させ、必要とされる団体になるために、5年後、10年後を見据えた対策を行うべきです」(金田氏)

日P会長が語る「信頼回復への道」

一連の流れを受け、編集部では25年9月、日P宛に内閣府からの勧告後の内部改革、退会するP連が増加する中で組織を維持する方策、PTAの全国組織としての役割について取材依頼書を送ったところ、太田敬介会長より、メールによる回答を受け取った。以下、記載する。

――先般の会計不祥事、内閣府からの勧告を受け、どのような内部改革を行っているのでしょうか。
「24年度、諮問会議内に規程ワーキンググループを立ち上げ、 集中的に議論を重ね、事務局規程、会計規程、契約規程、内部通報に関する規程等の10以上の関連規程について改正・制定を進めて参りました。現在は、 それらの規程に則った事務フローを着実に運用しているところです。
また、それらの事務フローについて、全国各地の役員が遠隔に居住しながらも適切に関与できるよう、DX の活用を推進しています。また、事務局体制については、不在であった局長・次長について25年7月1日付で任命し、法人運営の実務面の適正性や安定化を図っております」
――退会するP連が増加中ですが、組織を維持するための方策についてご教示ください。
「ご指摘のとおり、現在、一部の地方協議会において退会の動きが広がり、会員数にも大きな影響が生じていることを、 当協議会としても真摯に受け止めております。このような状況に至った最大の要因は、過去の不正な事案により、信頼関係が損なわれたことによるものと認識しております。
だからこそ、私たちはこの危機を組織の抜本的な見直しの機会と捉え、再発防止と信頼回復に向け、前述にあるような内部改革を進めているところです。私たちは『すべての子どもたちの健やかな成長と、PTA会員の学びの場のために』というPTA本来の目的を再確認し、もう一度原点に立ち返る覚悟で活動してまいります。失われた信頼は一朝一夕には回復できませんが、一つひとつ誠実に取り組みを積み重ね、再び皆さまに『必要とされる存在』となれるよう全力を尽くしてまいります」
――PTAの全国組織としての役割とは何でしょうか。日Pとしての今後の展望について教えてください。
「日Pは、戦後発足以来、全国各地のPTAや地方協議会の声を国や教育行政に対して届け、 学校教育や子育て支援、安全対策などの各施策について、保護者の立場から社会に働きかけてきました。また、さまざまな教育課題や子どもの健全育成に関する情報について、各地のPTA会員に提供するため、全国大会・ブロック大会・各種研修会等を開催し、保護者や教職員の学びや気づきを広げる役割を担っております。
都道府県・市区町村単位のPTA協議会や各校のPTA同士がつながり、情報交換や支え合いができるよう橋渡し役として、また、ほかの教育関連団体や行政機関とも連携し、より大きなネットワークを形成することも全国組織の大切な役割だと認識しております。24年1月の能登半島地震発生の際は、全国のPTAから支援金を募り、被災地の復興を支援いたしました。これからも、支え合いのネットワークと実行力を発揮していくことは、全国組織としての大切な役割だと考えます」
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