47年前から「個別最適な学び」、愛知県の公立小が独自の教育課程を継続できる訳 単元内自由進度学習の先駆け「緒川小学校」の今

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ここ数年は、3年生の3学期にも5コマ程度の「プレ・オープン・タイム」を設けている。学級単位の授業の中で自分のやりたいことを見つけて取り組む経験をすることで、4年生からの導入につなげているそうだ。

協働的な集団活動である「独立国活動」は、おがわっ子フェスティバル(文化祭)、スポーツ祭(運動会)、修学旅行、最後の学習(卒業式)といった行事の内容をすべて子どもたちが決めて運営する活動だ。選挙で選ばれた「首脳部」と呼ばれる子どもたちが中心となり、教員はサポート役に徹する。「今年はハロウィンのイベントをやりたい」といった子どもたちの発案が議会で通れば、それが実際の行事になる。

「6態様」を通じて、自ら学び、自らの手で学校を運営する経験をする緒川小の子どもたち。鈴木氏は、「人前に出て自分のことを話したり、主張したりすることが得意な子が多い」との印象を抱いているという。

地域ぐるみで学校の内外から伝統を支える

公立校では教員の異動があるため、独自の取り組みを継続することは容易ではない。緒川小は、なぜ47年間にわたって「6態様」の教育実践を継続できたのだろうか。

「校舎改築時より相談に乗ってくださっている上智大学名誉教授の加藤幸次先生をはじめとする研究者の方々が、緒川小の教育課程の意義を発信し続けてくださったことに加えて、緒川小の取り組みを維持するための予算を組むなど、東浦町教育委員会の後押しも大きいと感じます。東浦町の日髙輝夫町長も緒川小出身で、教育委員会や本校の教員にも卒業生がいますし、親子二代で緒川小に通っているご家庭もあるため、本校の教育課程をよく知る人々が学校の内外から支えてくださっているように思います」(鈴木氏)

また、教員のスキルアップとして、若手教員へのOJTに加え、週末に研修会を開催。そのために職員会議は原則として月曜日のみとし、メリハリのついた働き方を実現しているという。

特色ある教育課程で学んだ子どもたちが中学校進学後に戸惑うことがないのかが気になるところだが、緒川小の卒業生が進学する北部中学校でも「マイプラン学習」という単元内自由進度学習が実施されている。そのため、緒川小の卒業生は中学進学後も主体的に学ぶ姿勢を持ち続けることができるという。

特色ある教育実践が注目を集める同校だが、「『週プロ』や『オープン・タイム』といった学習スタイルを取り入れるだけですべての課題が解決できるわけではない」と鈴木氏は強調する。

「まずは日頃の授業の中で、子どもと教員がよい関係を築くことが大切です。1人ひとりの子どもをよく観察し、その子に合った支援をする。不易とも言える教員の役割を教員自身が自覚して子どもと向き合うことが、個別最適な学びや協働的な学びを実現するうえで最も重要なことだと思います」(鈴木氏)

(文:安永美穂、注記のない写真:東浦町立緒川小学校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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