47年前から「個別最適な学び」、愛知県の公立小が独自の教育課程を継続できる訳 単元内自由進度学習の先駆け「緒川小学校」の今

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何を学ぶべきかを「自分で気づく力」を育む

では、「6態様」の具体的な内容を見ていこう。

小学校6年間で習う内容を無学年制でスモールステップにて学ぶことができる「はげみ学習」は、基礎学力の定着を目的としたプリント教材「はげみ」を用いた学習だ。かつては時間割に組み込まれていたが、近年は従来の「文字」と「計算」に、新たに「英単語」「体力づくり」「音楽(リコーダー)」を追加し、1人1台端末にも配信。自己学習力を育むツールとして活用されている。

子どもたちは今、各自の必要に応じて隙間時間や家庭学習で「はげみ」に取り組んでおり、授業の中で「はげみの時間」を取る教員もいる。緒川小学校教務主任の鈴木佳代氏は、次のように話す。

鈴木佳代(すずき・かよ)
愛知県東浦町立緒川小学校 教務主任
高浜市、東海市、東浦町の小学校教諭を経て、2019年より緒川小学校に赴任。2022年「教職研修」4月号(教育開発研究所)で『子どもが自分で「決められる」学校へ』を執筆。2022年度の第6回NITS大賞において「おがわっ子ワクワクプロジェクト!~願いが叶う!子どもが主役の学校づくり~」で入賞、2023年度NITS「子どもを主語にした個別最適な学び」セミナーでは講師を務めた。現在は、県内外の研修会で講師を務め、講話を行っている

「高学年の子どもが九九の復習をしたり、低学年の子どもが英単語をどんどん進めたりするなど、子ども自身が自分の力を見取り、必要な学びを自分で選択できるのが『はげみ学習』の特長です。AIが自動的に問題を出してくれるデジタルドリルとは異なり、自分は何を学べばよいのかを『自分で気づく力』を育むことを大切にしています」

一斉授業にあたる「集団学習」は、最も多くの時間を占める。状況に応じて、習熟度の差が生じやすい算数を中心に、マスタリー・ラーニング(完全習得学習)も実施している。とくに、2年生の九九と6年生3学期の計算のまとめの単元では、通常の3クラスを習熟度別に4~5クラスに分け、すべての子どもが「できる」という自信を持って次の学習に進めるようにしているという。

保健室利用も減る、子どもが意欲的に学ぶ「週プロ」の魅力

「週プロ」は、単元内自由進度学習の先駆けともいえる取り組みだ。学期に1回を目安に20~30コマ程度を充て、対象となる2~3教科を子どもたち自らが学習計画を立てて学んでいく。

子どもたちの様子を見ながら、小3の理科「風とゴムの力」と図工「ゴムのおもちゃ作り」のように、関連性のある単元を連動して学べるようにすることもあれば、子どもたちの学びの意欲を持続できるようにまったく関連性のない単元を組み合わせることもあるそうだ。

授業の導入では、教員が「自己学習力を育む」という目的を伝え、単元の目標や学習内容を説明。学び方については「調べ学習をする」「実験をする」といった複数のコースを教員が提示するが、高学年になると「フリーコース」を選択して、自分なりの方法で学ぶ子どもも増えるという。

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