47年前から「個別最適な学び」、愛知県の公立小が独自の教育課程を継続できる訳 単元内自由進度学習の先駆け「緒川小学校」の今

学習の進捗は、期間中に2~3回実施するチェックテスト等で判断する。進捗が思わしくない場合は、教員が資料を提供したり、個別に指導したりしてフォローしている。
「『週プロ』で重視しているのは、子どもたちがどのような学び方をしているかというプロセスです。教員は、手を差し伸べるべきなのか、待つべきなのかを判断しながら対応しています」(鈴木氏)
児童へのアンケートでは「『週プロ』が楽しみ」と回答する子どもが多く、この期間は保健室の利用が減るなど、子どもたちの学習意欲を高める効果も確認されているという。鈴木氏は「決められた時間に決められたことをやらなければいけないという縛りがなくなり、自分で選んだ場所・方法で学ぶことができる。そこが子どもにとっての魅力ではないか」と見ている。学習成果についても、集団学習と同等の成果が出ているとのことだ。
「個別」と「協働」の2種類の探究活動を展開
「総合学習『生きる』」では、1・2年生の生活科と3~6年生の総合的な学習の時間を一体化させ、6年間にわたる系統的な探究活動を行う。1年生は身近なテーマから始め、6年生になると「生き方」をテーマに国際交流や世界の課題に目を向けていく。
6年生は毎年「アートマイル国際協働学習」に取り組み、海外の学校とオンライン上で「貧困」や「環境」といった共通課題について学び合い、壁画サイズの作品を共同制作する。この作品は「最後の学習」(卒業式)で披露され、下級生は6年生になってこの学習に取り組むことを楽しみにしているという。
「総合学習『生きる』」も、「週プロ」と同様に学年単位で授業を行う点が大きな特徴だ。その背景には「1人の子を複数の大人の目で見るようにしたい」という考えがあると鈴木氏は言う。
「学級の30人の子どもたちを1人の担任だけで見ていては、その担任教員からの見方しかできません。1人の子をたくさんの大人が見ることによって、その子の多様な側面を多角的に評価するのが緒川小のスタイルです」(鈴木氏)
もう1つの探究活動「オープン・タイム」は、4~6年生を対象とした「個別最適な学び」の色合いが最も濃い活動だ。年度初めに「チャレンジしたいこと」の分野ごとにグループを組み、6年生のリーダーの下で活動の進め方や道具の使い方などを学んだ後、各自が個人で設定したテーマを探究する。

「この活動で伸ばしたいのは、自分のやりたいことを課題として設定する力、それをどうやって解決するかの計画を立てる力、そこに挑む力、うまくいかないときに計画を調整して乗り越えていく粘り強さです。最後は自分の取り組みを振り返り、それを次に生かせるようになってほしいと考えています」(鈴木氏)
子どもにとっては、失敗も貴重な学びになる。例えば、角材でバットを作ろうとしていたある児童は、途中で難しいと気づき、バットの形のキーホルダーを作るように方向転換したことがあった。「どうリカバーしていくかを自分で考えることが重要なので、ボランティアとして活動を見守る保護者には『子どもが困っていても安易に手を差し伸べないでほしい』と伝えている」と鈴木氏は話す。