「特別支援学校化」する定時制高校、誰一人取り残さない…教員を追い込む"呪いの言葉" 7〜8割が不登校経験、何らかの困りごと抱える
「エレベーターがない学校の場合は、教員が人力で対応しなければなりません。また、生徒本人や保護者が『修学旅行に行かせたい』と望めば、車いすやストレッチャーで運びながら連れていかなければなりません。対応できる設備も余力もない中で、教員が疲弊している例は全国各地で起きています」
意欲のある子に学びの場を確保するというと聞こえはいいが、設備が整っていなかったり教員の数が十分でなければ現場は苦しいだけだろう。
教員を追い込む“呪いの言葉”
こうした事例は一部だが、文科省の打ち出す“合理的配慮”によって、現在は高校でも生徒や保護者から要望があれば、試験問題を含むすべてのプリントの漢字にルビを振ることは当たり前だ。
さらに文科省が2024年、不登校の高校生がオンライン授業で単位取得できる制度を導入したことも、教員をますます苦しめているという。
「そういう生徒のために通信制高校という選択肢もあるはずなのにまったくの愚策です。ただでさえ教員は通常の授業や学校行事などで多忙です。それに加えてオンライン授業の準備にも追われ、パンク寸前です。文科省は『誰一人取り残さない学び』だと胸を張っていますが、呪いの言葉ですよ。たった一人の生徒を取り残さないために、残りすべての生徒を犠牲にしている。その結果、『誰一人救えない学び』に陥っているのが現状です」
大塚さんは、ほかにも教員が好んで使い、自らの首を絞めている呪いの言葉があると訴える。
「『生徒に寄り添う』という言葉も呪いです。確かに業務は多忙ですが、ずるずると長時間勤務している教員は少なくない。『時給換算したら200円を切った』と自虐的に笑いながら“生徒に寄り添う”ことに自己満足している教員もいます。お金や時間に対するコスト意識がなさすぎます。教員のエネルギーも時間も有限なのに、自分が頑張ればいいと無理を重ねて身体を壊してしまう。
しかも、明らかに負担が減る提案をしても、なぜか多くの教員が嫌がる。変化を極端に嫌うことに加え、根が真面目なので楽をすることに罪悪感があるのです。完全に思考停止しています」
高校で教えることは「アルバイトをしよう」
生徒のほとんどが何らかの問題を抱え、教員は呪いの言葉に縛られた高校では、いったいどんな教育を行っているのだろうか。
大塚さんは「『アルバイトをしよう』です」と単純明快に言い切る。高等教育の場で、勉強ではなく、働けというのは職務放棄に思えるが、大塚さんはそうではないと反論する。
「正直言って、まったく学習意欲がない生徒は少なくありません。中には家族に働いている人が一人もいない生徒もいます。保護者が病気で生活保護を受けている場合もありますが、単に働く気がないだけのことも多い。周囲に社会人のロールモデルがいないので、生徒はちょっとでも嫌なことがあれば、すぐに投げ出してしまう。だから、どんな仕事でもいいので、自分ができることを続けられる力を身につけさせることが重要です。それにはアルバイトを経験するのが一番です。極論を言えば、勉強なんかできなくてもいい」
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