新卒と臨任しかいない「特別支援学級」、《残業は月120時間超》で休職に至った教員の叫び 通常級優先としか思えない…悲痛すぎる実態
北沢さんは着任早々、教室を整備し、小学校からの申し送りを基に新入生全員の個別支援計画を作成するなど業務に追われることになった。さらに彼を愕然とさせたのが、前年度まで使っていたプリントなどが整理されておらず、授業で使える教材が何一つ用意されていなかったことだ。
「支援級では中学校の教科書は実態に合わない生徒もいます。でも、学校には何の教材もない。仕方なく、小学校1年生から6年生までの国語と算数の教材をすべて自費で購入しました。あまりにも大量なので、安く抑えるためにメルカリで購入したのですが、それでも1万円くらいかかりました」(北沢さん)
新学期の授業が始まると、北沢さんが1クラスを受け持ったが、当然、彼に空きコマはなく、さらに多忙な状態に陥った。
残業時間は120時間超、ついに心が折れて休職
本来の勤務時間は午前8時20分出勤、午後4時50分退勤だったが、「毎朝7時には出勤し、帰るのは早くても夜9時頃。終電間際まで残業することも休日出勤もざらでした。記録上の4月の残業時間は120時間を超えました。残業代は出ませんから、きちんと記録しなかった日もあったので、実際は150時間を超えていたはずです」(北沢さん)。
そもそも給特法により、公立の教員が超過勤務を命じられるのは校外実習、学校行事、職員会議、非常災害などの4項目のみ。給料月額4%の教職調整額が支給される代わりに時間外手当はなく、いくら働いても残業代が出ないことから「定額働かせ放題」などと揶揄されている。
そんな中、2019年に文科省は超勤4項目以外の自主的・自発的な勤務も含めた在校等時間、つまり超過勤務を月45時間以内にするようガイドラインを出している。これは労働基準法の時間外労働の上限で、超えた場合は校長など管理職が口頭注意などで是正させなければならない。
月に120〜150時間となると、一般的に月80時間といわれる過労死ラインもゆうに超えているが、北沢さんは管理職から残業については何も言われなかったという。それでも生徒のためを思って、目の前の業務を一つずつこなしていたが、次第に臨任の主任にペースをかき乱されるようになった。
「主任から深夜や休日にLINEで重要事項の伝達が来るようになり、次の日にやろうとしている計画がことごとく潰れていきました。主任のやり方は場当たり的な自転車操業で、私とはまったく合わなかった」(北沢さん)
5月に入っても状況は悪くなる一方だった。
「ゴールデンウィーク(GW)明けに生徒の家庭訪問があったのですが、主任はGWと合わせて数日間の有給休暇を取っており、結局すべての家庭を私と初任教員の2人で訪問しました。また、生徒に文章を書く力を身に付けてほしいと思い、週1回の作文を提案したのですが、主任から『仕事が増える』と言われ、強い不信感を持つようになりました」(北沢さん)
そして、ついに心が折れた。
「主任が1日出張に行く日の当日に『明日、生徒に配布する書類が終わっていないのでお願いします。管理職に確認も取ってください』と私に押し付けて出発してしまったのです。主任は前々から予定していた私用で、その前日も有休を取っていたのに、何一つ準備していなかったのです。学校に残された私は、過呼吸を起こして倒れてしまいました」
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