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今週のもう1冊『アザー・オリンピアンズ 排除と混迷の性別確認検査導入史』書評/性別二元論を前提とする競技スポーツの危うさ浮き彫りに

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『アザー・オリンピアンズ 排除と混迷の性別確認検査導入史』マイケル・ウォーターズ 著
アザー・オリンピアンズ 排除と混迷の性別確認検査導入史(マイケル・ウォーターズ 著/ニキリンコ 訳/井谷聡子 解説/勁草書房/3520円/344ページ)
[著者プロフィル]Michael Waters(マイケル・ウォーターズ)/ノンフィクション作家。米ニューヨーク公共図書館で2021〜22年にかけて客員研究員としてLGBTQ学を研究するなどし、ニューヨーク・タイムズなどに寄稿。
さまざまな分野の専門家が、幅広い分野から厳選した書籍を紹介する。【土曜日更新】

ファシズムが台頭した1930年代は、女子スポーツの黎明期と重なる。当時の性別規範から外れた女性アスリートたちにとっては、苦難の時代の幕開けでもあった。本書はそんな時代に巻き起こった性別確認検査の起源をたどる歴史書であり、男性への性別移行を公表したアスリートたちの物語だ。

性別確認検査の起源

36年の独ベルリン五輪開催が決まると、ナチスがスポーツ界との交わりを深くする。優生思想を国是としたナチスは、性的マイノリティーから成る「クィアコミュニティー」を敵視。国際オリンピック委員会(IOC)を牛耳る男性幹部らはそれに歩調を合わせた。

IOCもまた、容姿やしぐさがステレオタイプの枠に収まらない女性に対し、嫌悪感を露(あら)わにしたのだ。「女性らしさ」を欠くアスリートを狙い撃ちにした性別確認検査は、ここに端を発する。

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