〈不可解な変化〉EUがワシントン条約へニホンウナギの掲載を提案!水産庁は「資源は回復傾向にある」と強調するが、専門家からは疑問の声も
これに対し、水産庁は「われわれの主張と報告書の記述は矛盾していない」と反論する。
同庁は東洋経済の取材に対し、報告書で「長期的には低水準かつ減少基調にある」としている「来遊状況」は、あくまで「採捕量」のことであると説明。日本ではシラスウナギの池入数量へ上限が設定されているため、漁業者は上限以上のシラスウナギを捕ることはせず、そもそも採捕量は増えにくいという。

つまり、採捕量と資源量は異なる指標であるため、報告書でいう「来遊状況」が減っているからといって、資源量が減っているわけではないとの言い分だ。
水産庁の説明は「無理筋」との指摘も
だが、『国際漁業資源の現況』の英語版において、「来遊状況」は従前から「population」と訳されてきた。
海部教授は「『population』は『個体数』または『個体群』を意味するため、「来遊状況は長期的には低水準かつ減少基調」という文言は沿岸に到達するシラスウナギ個体数の減少を示している。『採捕量』であれば『catch』といった単語を使うはずで、『来遊状況』が『採捕量』を表すという説明は無理筋だ」と批判する。
そもそも、最新版の『国際漁業資源の現況』において、ニホンウナギの資源の状態(資源評価結果)は「資源水準は低位・資源動向は横ばい」と判断されている。
同報告書は委託事業とはいえ、水産庁と水産研究・教育機構が連名で発行していることから、記載内容は水産庁の公式見解と考えられる。にもかかわらず、直近の報告書と、水産庁が6月に示した「資源は回復傾向である」という主張との間にはずれが生じているように見える。
水産庁にかけられた疑いはこれだけではない。同報告書の英語版には、今年に入ってある“不可解な変化”が起きていた。
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