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「自由進度学習」導入から4カ月、町田市立小川小「教育の本質」と向き合って感じる手応え 運営では"見抜く・仕掛ける・なじませる"重視

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さらに蓑手氏は、「自由進度学習は『子どもたちを喜ばせるエンターテイメント』ではなく、『成長の喜び』『世界のすばらしさ』を伝える教育の本質を追求するものであると思います。まだ始まったばかりの小川小学校の取り組みは、これからの日本の教育、そして世界の教育のあり方を考えるうえで、大いに注目すべき実践です」と、講演を締めくくった。

スペシャルゲストとしてHILLOCKの蓑手氏が登壇

より良い学びの環境を目指して

研究主任の吉野氏は、「自由進度学習を導入したことにより、教員が『教えなければ』という義務感から解放され、子どもたち1人ひとりをより深く見取れるようになりました。また、教員は『教えこむ』のでなく、子どもたちが自ら学びを深められるよう、ファシリテーターとしての役割を果たそうという意識が強まりました」という。

一方で、課題も見えてきた。「『何ページを開いて』『ここを指さして』などこれまでの画一的な指導が、子どもたちから『自ら情報を読み取る力』を奪っていたのではないか」と、吉野氏は指摘する。

「自由進度学習では、掲示物や教材から自分で学びを見つけ出すことが求められますが、それが難しい子どもたちが多い現状があります。今後は、子どもたちが自ら教材や掲示物を読み解き、学びを進める力を養うための工夫が求められていると感じています。

また、自由進度学習は、学力上位の児童はどこまでも深く学ぶことができますが、その反面、すべての児童が『わかった』と感じられるような教材作りに難しさを感じています。とくに、学力下位の児童が理解を深められるような教材開発が、今後の重要なテーマです。他社の教科書も比較検討し、学習指導要領の『必須項目』をあらためて明確にしたうえで、本当に押さえるべきポイントに絞った教材研究を進めています」(吉野氏)

小川小の自由進度学習のさらなる進化に向けて、星氏はこう語る。

「今後の展開として、まず、算数のように積み重ねが大切な教科で、本校の縦割り班を活用し、学年を超えた子どもたちが同じ空間で学ぶ機会を設けていきます。年下の児童が年上の児童の学びから刺激を受けたり、年上の児童が教えることで学びを深めたりする、といった相互作用を期待しています。また、すべての子どもたちが自分のペースで安心して学べるよう、目で見て直感的に理解できるような教材や、具体的な操作を伴う教材を増やすなど、特別支援教育の視点からも学びの場づくりの改善を目指していきたいですね」

星氏は続ける。

「サイコロの展開図で失敗したものを見せあうといった『失敗を共有するコーナー』や『大きな教材の活用』も、子どもたちの理解を深めることができるのではないかと。例えば、単純な5-1=4という計算でも、大きな金魚が1匹いなくなる様子と小さな金魚が1匹いなくなる様子を比べると、『1』という数が、対象物の大きさにかかわらず同じ『1』であることを直感的に捉えられます。これにより、抽象的な数の概念を具体的な体験を通して学ぶことができ、教科書では得られない深い学びにつながります」

子どもたちの学びを促進するような環境づくりの法則を見つけ、実践することで、より効果的な学習空間を作り出していくということだ。さらに、「子どもたち全員の振り返りの質を高めつつ教員の負担を軽減するため、生成AIを活用して振り返りの分析や価値付けを効率的に分析し、それをもとに児童一人ひとりの成長をより深くサポートしていくことも検討しています」という。

小川小学校の自由進度学習は、始まったばかりの挑戦だ。しかしそこには、子どもたちの「学びの楽しさ」を最大限に引き出し、これからの時代に必要な力を育むための、教育の本質を追求する強い意志と、変化をおそれない教職員たちの情熱が息づいている。

(写真:長島ともこ)

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