「自由進度学習」導入から4カ月、町田市立小川小「教育の本質」と向き合って感じる手応え 運営では"見抜く・仕掛ける・なじませる"重視

これからはチームで取り組む時代
2024年度から同校の校長に着任した星 彰氏は、学校運営から学級経営、日々の授業づくりに至るまで、あらゆる面で「これからはチームで取り組む時代」と確信していた。
「着任前、前任者から病気休職者がいることを聞き、従来の学級担任制が教員1人ひとりに大きな負担をかけている現状を痛感しました。そこで、校長として着任した昨年度から、学級担任制を廃止しチーム担任制へと移行しました。この改革には、教員が1人で『授業の名人』を目指すのではなく、『チームで協力して授業を作り上げていきたい』『真の意味での個別最適化を目指したい』という思いが込められています。短い校長任期の中で学校全体に良い変化をもたらすには、授業づくりこそチームで行うのが最善だと考えました」(星氏)

町田市立小川小学校校長
そんな中、星氏は愛知県東浦町立緒川小学校の自由進度学習を視察する機会を得た。
「そこで目にしたのは、教員は環境作りに集中し、子どもたちが自ら学びを進める生き生きとした姿でした。『これだ!』と強い手応えを感じたことが、本校に自由進度学習を取り入れるきっかけとなりました」(星氏)
昨年度は、まず4年生と6年生で試験的に導入。その確かな手応えを踏まえ、今年度は全学年で複数教科単元内自由進度学習を展開している。各学年で年に3回の実施を計画しており、新たな教育の形を探究している真っ最中だ。
星氏は、「この取り組みを、教員、児童、保護者と対話を重ねながらお互いが納得して進めていくことが、私の使命だと思っています」と語る。自身のリーダーシップについては「見抜く、仕掛ける、なじませる」という独自のアプローチで表現。これは、学校運営において星氏がとくに重視する3つの段階を示している。
その具体的な実践の1つが、これまで形式的に行われていた毎週の全校朝会を廃止し、新たに導入された不定期の「全校ミーティング」だ。
「児童や教職員との日々の会話から、今この学校に必要な課題を見いだし(=見抜く)、それを全校ミーティングで子どもたちや教職員に伝え、教員が日々の指導に生かせるようなヒントを提供(=仕掛ける)しています。教員はその話を授業や掲示物に生かし、実践に取り入れていく(=なじませる)のです。忙しい朝ではなく給食後の時間に行うことで、教員がゆとりを持って話に耳を傾け、学校全体で思考や価値観を共有する場となっています」(星氏)
例えば、あるとき、教員から「自由進度学習では、とくに中位層の児童が、どのくらいの目標を設定したらよいか困ってしまい伸び悩む傾向がある」と言う声が上がった。
これに対し星氏は、全校ミーティングで、全児童と教員に向け、「快適空間」にとどまらず、「背伸び空間」に踏み出す大切さについて説明。「『背伸び空間』の基準は、テストに例えるなら85点くらい。10問中1〜2問くらい間違えてしまうくらいの難しさに挑戦すると、最も成長できるんです。だからこそ、自分自身の背伸び空間を見つけよう」と呼びかけた。
この呼びかけは効果を生み、その後教員たちは「背伸び空間」の図を掲示したり、授業の振り返りに活用したりと、さまざまな工夫を凝らして指導に生かしていると言う。
「eboard」「ミニレッスン」を活用
同校の自由進度学習を支える具体的な取り組みとして挙げられるのが、オンラインICT教材「eboard」と「ミニレッスン」の活用だ。研究主任の吉野由美子氏は、こう話す。
「eboardは、主に2年生以上の算数の授業に活用している学習動画です。筆算や小数点の割り算などに苦手意識を感じる児童が、動画を自分のペースで一時停止したり、問題を解いて答え合わせをしたりすることで理解が深まり、学習への意欲がグッと高まるようです」
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