今回のリコール運動は、半年を超えた長期間にわたって行われ、盛り上がりと沈滞を繰り返した。与野党の大きな衝突が発生したのは昨年5月だ。そのとき、政府与党を支持する人たちが立法院を取り巻いて抗議活動を行った。その人たちは「青い鳥」と呼ばれ、野党は中国寄りだという批判の声をあげた。だが、野党はひるまず攻勢を続けて抗議行動は挫折した。
コアな支持層へ訴えかけたリコール派
この「青い鳥」に参加した市民の中から「ならば自分の選挙区の国民党立法委員をリコールしよう」という声が持ち上がり、昨年末にいくつかのリコール運動団体が発足。市民団体のボランティアが署名の呼びかけを始めた。参加したのは30代が多く、2014年のひまわり運動の影響を受けた人たちが多かった。
今年1月、民進党立法委員団長の柯建銘氏が「大規模リコール」を提起して運動に発破をかけた。ただ、この時点では運動の熱気は乏しく民進党内でさえ冷ややかな空気があった。
リコールを実現するには大きく3段階ある。まず有権者の100分の1が発議の署名をし、その次に投票請求のために有権者の10分の1の署名が必要だ。この2段階をクリアしてリコールの是非を問う投票が実施される。投票では賛成票が有権者の4分の1を上回り、かつ反対票を上回ればリコールが成立してその立法委員は解職される。
リコール投票は総統・立法委員選挙と比べて投票率は低い。リコール推進派にとっては広く中間派の支持を獲得することよりもM字型の片方の支持を固めることが有利な戦略になる。中間派の受け止めはあまり気にせず、「仇恨(憎しみや敵意)」と呼ばれる負の感情を高めることに訴えが集中する傾向がある。ここに勝負を左右する微妙な要素が潜んでいる。
リコール投票に持ち込むための有権者の10分の1の署名は簡単なように見えて、なかなか難しい。台湾でも個人情報保護意識が高まり、自分の氏名、住所、生年月日、身分証番号を書くことに抵抗感のある人も少なくない。
リコール運動が広がり始めた中、国民党は「リコールにはリコールで対抗する」として民進党立法委員へのリコール活動を打ち出した。ところが国民党はここでとんでもない失策をした。
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