学費タダ・経歴不問でエンジニア養成するフランス発「42 Tokyo」の実態、採用直結型カリキュラムでホワイトハッカー集団とタッグ

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「今はソフトウェアエンジニアとして働いていますが、今後のキャリアアップを考えた際に、この経験を生かして、よりセキュリティ的な目線を持ってソフトウェア開発に携わっていきたいです。新卒で入社してエンジニアとして先に進んでいくうえで、この課題で得たスキルや視点は、間違いなく自分の武器になっていくと考えています」(稲村氏)

セキュリティ業界への新たな入り口へ

「Road to Fore-Z」をクリアすると、フォアーゼットの採用試験や人事面接などが免除され、役員面接から受けることができる。とはいえ、「Road to Fore-Z」は単にフォアーゼットが優秀な学生を採用するためだけのプログラムではない。42 Tokyo、フォアーゼットそれぞれが、この取り組みを通してより大きな未来図を描いているのだ。

「このプログラムで、うちが何人雇えるか、ということは重要ではありません。それよりも、長期的な試みの中で、1人でも多くの人がうちの会社を知ってくれて、セキュリティの道に邁進する人が増えることのほうが重要なんです。その結果として、うちで働きたい、という人がいて、ご縁があればうれしいですね」(田中氏)

また、田中氏が求めるのは、技術力だけではない。爆発するほどの知的好奇心と、同時にそれを制御できる「自らを律する心」も重要だという。サイバーセキュリティ技術は諸刃の剣で、悪用すれば容易に利益を得ることもできる。

だからこそ、高い倫理観と自律性が不可欠なのだ。このプログラムは、そうした資質を持つ未来の同志を見つけ出し、育むための土壌でもあるという。一方、42 Tokyoの成澤氏は、このプログラムがサイバーセキュリティ業界への新たな入り口となることに期待を寄せている。

「サイバーセキュリティ人材は今すごく需要が高まっています。『Road to Fore-Z』が、セキュリティ分野を目指したい人にとって、意欲さえあれば誰でも挑戦でき、キャリアにつながる機会になってほしいです。とくにフォアーゼットはサイバーセキュリティのトップ企業ですので、42 Tokyoからそこで活躍する人材を輩出できたらうれしいです」(成澤氏)

42 Tokyoでは学生同士で学び合う
42 Tokyoからは約2000人の学生が卒業している(写真:42 Tokyo提供)

42のカリキュラムをしっかりとこなせば、「Road to Fore-Z」の課題は解けるように設計されているという。このプログラムは、42で培った課題解決能力を試す絶好の機会であり、同時に日本のセキュリティレベル向上に貢献する人材を育成する道筋でもあるのだ。

これまで、42 Tokyoからは約2000人の学生が卒業し、さまざまな企業で活躍している。また、42の理念に共感するパートナー企業も順調に増加している。個社での採用競争に終始するのではなく、業界全体のパイを広げ、共に未来を創っていこうという大きなビジョンへの共感が広がっているということだろう。

単純な正解のない問いに、仲間と協力しながら挑み続ける42の学びのスタイルは、未知の脅威に立ち向かうセキュリティの世界と親和性が高い。この異色の学び舎から、爆発的な知的好奇心と強い自律性を兼ね備えた新世代のホワイトハッカーたちが、次々と羽ばたき、日本のデジタル社会の未来を守ってくれる日が来ることを期待したい。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
柳谷 智宣 ITライター

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やなぎや とものり / Tomonori Yanagiya

1972年生まれ。1998年からITライターとして活動し、エンタープライズ向けのプロダクトをはじめAI、DX、サイバーセキュリティまで幅広い領域で執筆する。2018年から、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動している。

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