学費タダ・経歴不問でエンジニア養成するフランス発「42 Tokyo」の実態、採用直結型カリキュラムでホワイトハッカー集団とタッグ
「Road to Fore-Z」を実施する42 Tokyoは、フランス・パリで設立されたエンジニア養成機関「42」の東京校。42は2013年に設立され、現在世界31カ国に57キャンパス(2025年7月現在)を展開しており、東京校は2020年に開校した。最大の特徴は、学費が完全無料であること、そしてキャンパスが24時間365日オープンしており、学生が自身のペースで学習を進められる点だ。
「かつて、フランスの教育には大きな格差がありました。お金を持っている人は高等教育を受けられますが、金銭的な問題で学校に行けない人たちもいます。そんな中、フランスの実業家が『意欲があれば誰でも平等に教育を受けられる機会を提供しよう』ということで42を設立しました。42 Tokyoも、学歴やプログラミング経験といったバックグラウンドに関係なく、誰でも平等に挑戦できる教育機会を提供したいという思いから日本に誘致しました」(成澤氏)

この理念は、入学試験の仕組みにも表れている。試験は2段階構成になっており、まず、論理的思考力や記憶力を測るオンラインの「エンジニア適性テスト」を受ける。合格すると、「Piscine(ピシン)」と呼ばれる4週間の入学試験に進む。
フランス語で「プール」を意味するこの試験では、受験生はキャンパスに通い、42の学習スタイルそのものである課題解決にチャレンジすることになる。ここで問われるのはプログラミングの知識ではなく、未知の課題に対し、周囲の受験生と協力しながら答えを導き出すコミュニケーション能力や問題解決能力だ。実際、受験生の約3割はプログラミング未経験者であり、現在の合格率は50%を超えるという。
42 Tokyoの学習環境もユニークだ。養成機関ではあるものの、教師も、教科書も、決まった時間割もない。中心となるのは「ピアラーニング」と「課題解決型学習」という2つの教育メソッドだ。

ピアラーニングとは、学生同士が教え合い、協力しながら学びを進めるスタイルのこと。誰かが一方的に教えるのではなく、互いの知識や発見を共有することで、主体的な学習能力と協調性を育むのが目的だ。
課題解決型学習では、まず最初に課題が与えられる。解き方は誰も教えてくれない。学生は自ら必要な情報を調べ、試行錯誤を繰り返し、仲間と議論しながら答えにたどり着く。このプロセスを通じて、実践的な思考力と自走力が徹底的に鍛えられるというわけだ。
C言語など基礎課程を学んだ後の3つの道
カリキュラムは、まず「コモンコア」と呼ばれる基礎課程から始まる。入学から1年〜1年半かけてコンピュータサイエンスの基礎やC言語などを学び、エンジニアとしての土台を築くことに集中する。
コモンコアを修了した学生には、3つの道が開かれる。サイバーセキュリティやAIといった専門カリキュラムで各分野を深める道(最大4年6カ月まで)、海外のキャンパスへ留学する道、そして就職だ。
42は就職を斡旋しているわけではないが、常駐のキャリアコンサルタントによる個別相談や、パートナー企業と連携した合同説明会やハッカソンなどを通じて、学生1人ひとりのキャリア形成をサポートしている。
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