発達障害・グレーゾーンの子と「不登校」との関係、学校の環境次第でハイリスクに 休ませていい?無理に登校させるとどうなるか
福祉の対象となる可能性とは、発達障害の子は成長できないとか、発達障害があったら学校には適応できないとか、そんな話ではありません。そうではなくて、発達障害があるということは、長い人生のどこかの時点で支援が必要になる可能性が一定の割合で存在するということです。
発達障害と考えられるところもあるけれど、はっきりと診断がつかないというような状態を「発達障害グレーゾーン」と呼ぶ人がいます。これは医学的な考え方ではなく、明確な定義もありません。一種のスラング(俗語)のようなものです。
私は、「グレーゾーン」という言葉を使うことには、多くのリスクがあると考えています。もっとも大きなリスクは、特性が目立たない、あるいは問題が少ない状態を「グレーゾーン」と呼ぶことによって、支援を受ける機会を逃してしまう可能性があることです。
いまは環境との相性がよくて、問題があまり起きていないものの、何かの拍子に支援が必要な状態になる可能性がある。「グレーゾーン」とは、そういう状態だと思うのです。
発達障害や「グレーゾーン」の子が登校しぶりをしているときに、大人が「そんなこと言わないで、もう少し頑張ろう」と言い聞かせていたら、おそらくその子は、自分には合わない環境で苦手なことを強要され、萎縮して、自信がなくなっていくでしょう。
大人の側は、社会の荒波に耐えられるような強さを身につけてほしくて、あえて厳しい環境で頑張らせようとしているのかもしれませんが、それはムダな厳しさです。苦手なことも少しずつ身につけていけるようにサポートするのではなく、苦手だとわかっていることを無理にやらせて、ただ失敗させているだけです。
そのような対応をしたら子どもは不安を感じやすくなり、プレッシャーに弱くなって、むしろ社会の荒波に一番耐えられない状態になっていきます。
私は、発達障害の子が将来、その子なりに社会参加するために必要なのは、登校日数や学力ではなく、生活スキルや対人関係などをその子なりに学んでいくこと、そして「自己決定力」と「相談力」を身につけることだと考えています。
自己決定力というのは、できることを自分で判断して実践する力です。相談力は、困ったときに誰かに援助を求める力です。この2つの力を持っていれば、子どもは本当の意味で自立することができます。自分で次の行動を決め、動き出せます。そして、困ったときには、誰かに相談して援助を求めることができます。
学校に必ずしも行かなくても、子どもは十分に成長していけます。みなさんには、お子さんの心の健康を第一にして、家庭生活、学校生活というものを考えていただきたいと思います。
(注記のない写真:Graphs / PIXTA)
執筆:児童精神科医・医学博士 本田 秀夫
東洋経済education × ICT編集部
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