発達障害・グレーゾーンの子と「不登校」との関係、学校の環境次第でハイリスクに 休ませていい?無理に登校させるとどうなるか

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では、ゆっくりペースの子を平均的なペースで頑張らせているとどうなるかというと、基本的には無理は続かないので、どこかの段階で力尽きて、退却することになります。

(イラスト:フクチマミ)

①最初のうちは、平均的なペースについていける場合もあります。しかしそれは子どもが人一倍頑張っているだけで、そんなことは長続きしません。②結局ついていけなくなって、ペースが落ちてきます。結果として、ゆっくりペースに落ち着いてきたりするのです。③また、過去に焦ってやっていた活動のなかには、十分に身についていないこともあったりします。その場合には、ゆっくり学び直す必要があります。

②のような状態になったとき、大人には、子どもの成長のレベルやスピードが落ちたように見えるかもしれません。また、本人も、それまでのペースが維持できなくなったことを失敗だと感じる可能性があります。しかし、それは失敗や挫折というよりは、その子にとって適度なペースに落ち着いてきた状態なのかもしれません。

一方、ゆっくりペースの子が最初から適度なペースで育っていった場合にどうなるかというと、平均的な子どもたちとの差は開きますが、大きな失敗・挫折を経験しない形で成長していけます。

①子どもは、自分に合ったペースであれば、さまざまな活動に落ち着いて取り組むことができます。内容を理解し、興味を持ちながら、ゆっくりやっていけます。②目標も達成しやすくなります。「できた!」という達成感を持てる場面が多くなり、自信も育ちやすくなるのです。③自分に合ったペースで育っている子は、ゆっくりとではありますが、少しずつ着実に成
長していきます。失敗や挫折を経験することは、多くありません。

健康的な自己肯定感は、子どもの達成したことが親や先生の期待を上回ったときにしか育ちませんが、その子に合ったペースを歩ませる話も自己肯定感につながります。子どもの育ち方を理解し、その子が適度なペースで成長するようにサポートすることが、本当の意味で自己肯定感を育てることになるのです。

無理をして頑張りすぎた子には、抑うつや不安などの精神症状が出ることがあります。発達障害の子にはもともと特性があって苦手なこともあるわけですが、それに加えて、二次的に精神症状が生じることがあるのです。

最終的には自分に合ったペースに落ち着いてきたとしても、感情が不安定になっていて、学習に落ち着いて取り組めない場合があります。その場合には、二次障害への治療を検討することになります。

成長のペースを上げて、山を高く登ろうとすれば、子どもはその分、多くのエネルギーを使うことになります。そのペースが子どもの本来のペースから離れれば離れるほど、子どもに負担がかかります。子どもはいずれついていけなくなり、ペースを落とすようになっていきますが、それまでに無理をすればするほど、二次障害の症状も重くなるのです。

頑張らせてうまくいかなかった段階から支援や配慮を検討しようとしても、問題が悪化していて、対応が難しい場合もあります。例えば、担任の先生や同級生とのトラブルがこじれてしまって、子どもがその相手の姿を見ただけでも体調を崩すようになることもあります。また、子どもが親や先生のことを信用できなくなっていて、支援や配慮を拒むという場合もあります。

そういうケースもあるので、不登校の対応では予防を目指すのが基本となります。子どもがその子に合ったペースでやっていけるように、早めに環境を整えるのが理想です。

発達障害の子が社会参加するために必要なのは…

発達障害の子が不登校になるときには本人の努力だけではどうしようもない問題もありますが、環境的な要因があることがわかっても、「本当にこのまま休んでいて大丈夫なのか」「やっぱり登校したほうがいいのでは」と考える人もいます。

そういう人は「ここで休んだら、中学(高校)にも行けなくなりそう」「学校に行けないようでは、この先、社会の荒波に耐えられない」と考えて、子どもが環境的な要因を乗り越えられるように、背中を押そうとすることがあります。

発達障害の子が通常学級で一定の配慮を受けながら、授業にしっかり参加できていることもあります。進学して就職し、家庭を持つ人も、もちろんいます。しかしその一方で、発達障害の子は、たとえIQが高くて勉強ができるとしても、どこかの段階で生活がうまくいかなくなり、福祉の対象となる可能性があるのです。そのことは、けっして軽視できるものではありません。

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