〈インタビュー〉垂秀夫・前中国大使「尖閣問題で日本はアメリカに裏切られた」「もはや中国に対日政策はない」/習氏の足元の政権基盤をどうみる?
――日中関係でトゲとなっているのが尖閣問題です。新著では「尖閣問題の本質は日米関係」と指摘されています。これの意味するところは?
アメリカ政府は尖閣諸島での日本の「施政権」を認めているが、「主権」については特定の立場を取らず、「中立」としている。これは厳密にいえば、もし中国政府が今後、尖閣を実効支配してしまったら、日米安全保障条約を適用できなくなることを意味する。
そもそも日本の主権を認めていないこと自体が、歴史的に見ておかしなことである。戦後、アメリカが沖縄を統治していたときにはアメリカは尖閣諸島に対する日本の主権を認めていたが、沖縄返還前に立場を翻したのだ。つまり、尖閣問題で日本はアメリカに裏切られたのである。
日米両政府は「尖閣諸島は日米安保条約の適用対象」と確認して安心しているが、現在は尖閣の施政権が日本にあるから日米安保条約の対象としているにすぎない。本当ならば、日本政府はアメリカ政府に対し、尖閣に対する日本の主権を再確認させなければならない。
外務省の中でも、尖閣問題の本質がアメリカの問題であることを認識している者は減ってきている。日本の歴代政権もアメリカ政府に異を唱えることをしてこなかった。