精神疾患による病休が過去最多→要因の多くは「人間関係」、教員に必要な"線引き"のコツ 「よかれと思って」は罠、心守る"バウンダリー"

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初期のサインは人それぞれですが、リフレッシュのためにどこかに出かけるのは、体がしっかり休まってからだという基本は覚えておいてほしいと思います。時間がないと言いながらも意外とスマホを見て睡眠時間が削られている方も多いので、デジタルデトックスもおすすめです。

ただそうはいっても、どうにも忙しくて睡眠時間を確保できなかったり、人との関係を線引きできなかったりすることもあるので、簡単ではないですよね。また、追い詰められてしまうと自分ではなかなか異常に気付けないこともありますので、自分の変化に気付いてくれる同僚などを作っておくことも予防につながるでしょう。

――管理職や学校が教員のメンタルヘルスケア対策としてできることはありますか。

1人で悩ませない環境を作っておくことは大切だと思います。トラブルが起きたときに管理職を中心に、教職員がチームで問題に取り組めるような環境があれば、教員1人ひとりの負担も減るのではないでしょうか。

助けを求めることは勇気が必要です。管理職の人たちは、例えばメンター制を取り入れるなど、教員が悩みを言いやすい風土づくりを意識すべきでしょう。一方、教員側も「察してもらえるはず」と受け身になりすぎないこと。自分でおかしいと気付けるサインを把握しておき、自分の異変に気付いたら助けを求める勇気を持っていてほしいと思います。

――もし自分に異変を感じたら、どのように病院を選ぶとよいでしょうか。1学期は何とか頑張ってきたけれど、夏休みには病院に行くべきだろうかと考えている教員もいると思います。しかし、精神科と聞くと、ハードルが高いと感じる人も多いかもしれません。

おかしいと思ったら、ぜひすぐに病院に行ってください。もしそれで病気じゃなかったとしたらそれが一番なので、気にすることはないですよ。もちろん、最初はかかりつけの内科などに相談して、身体的な検査をして異常がないのに体が辛いようであれば精神科に来るという形もいいと思います。

最近では気軽に行きやすいメンタルクリニックやオンライン診療なども増えてきましたが、精神科で少なくとも3年以上働いている専門医や精神保健指定医がいるかどうかが信頼できる機関を選ぶ1つの目安。きちんとした診断で必要な休養の確保だけでなく、復帰への道も一緒に考えてくれると思いますよ。

藤野智哉(ふじの・ともや)
精神科医、産業医、公認心理師
1991年生まれ。秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、メディアへの出演も多数。現在は精神科病院の副院長を務める。『人間関係に「線を引く」レッスン 人生がラクになる「バウンダリー」の考え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。SNS総フォロワー数13万人(2025年4月現在)

(文:酒井明子、写真:藤野智哉氏提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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