不登校改善や学力向上、教員の休職がゼロになった学校も・・・非認知能力育む「SEL」とは? 必要な学びに向かうための環境や土台をつくる

SELはすぐに効果が表れるものではないが、不登校の状況が改善した学校が複数あるという。全国学力・学習状況調査の結果が向上した小中学校、国公立大学の合格者が増えた高校もある。
「不登校の改善が見られた学校では、教員が生徒1人ひとりの気持ちや状態を把握する力が向上していることが後追いの調査でわかりました。そうした教員の変化が五月雨登校の子にも伝わり、不登校の改善につながったのではと分析しています。また学力の向上は、子どもたちが学校での居場所や役割を見つけられたことによる安心感の高まりと関連性があることが、ウェルビーイング指標からも見えてきています」
そのほか、自分の気持ちと上手に付き合える子どもが増え、教師の挑戦意欲が高まるだけでなく、「不登校の子のうち10人以上が登校復帰した」「年間150日以上休んでいた子が週4日ほど出席できるようになった」「年度内で休職に入る教員がゼロになった」「3割だった保護者の学校活動参加率が8~9割に増加した」といった複数の成果が1年で見られるようになった学校もあるという。
とはいえ、日本の教育という観点からは課題もまだまだあると下向氏は感じている。
「非認知能力の大切さが叫ばれていますが、教育現場はいわゆる偏差値で評価する“学力重視”だったり、速効性のある教育を求めたりする傾向がまだ強いと感じます。また、教育の仕組みを作る方々と話をすると、子どもたちと同じような自己有用感の低さを感じます。非認知能力が重要であると感じながらも、自分たちに制度や仕組みを変えられるわけがないと思っていらっしゃる。教育先進国ではすでに教育関係者の自己有用感を高めるアプローチも進んでおり、日本も変わらなければいけないと思います。子どもたちの自己効力感・肯定感を高めるためにも大人たちが変わる必要があるのではないでしょうか」
(文:酒井明子、写真:roku you提供)
東洋経済education × ICT編集部
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