
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表
徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー。主な著書に『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』『先生を、死なせない。』(ともに教育開発研究所)、『教師崩壊』『教師と学校の失敗学』(ともにPHP研究所)、『学校をおもしろくする思考法』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中
(写真は本人提供)
別の例としては、見栄えを気にしすぎている卒業式だ。コロナ禍のときは簡素にしていたのに、最近では、来賓や保護者の反応を気にして、児童の呼びかけ(教員や保護者へのお礼の言葉など)や合唱を何度も練習させている小学校等も一部にある。これでは、誰のための、何のための卒業式なのか、わかったものではない。そんな学校で、「児童の主体性や自ら考える力を育てる」などと学校ビジョンには書いているのだから、言行不一致ではないか。
そうした学校のビジョンや経営計画(グランドデザインなど名称はさまざま)、あるいは文科省、教育委員会の計画を読んでいると、あれもこれも大事、という記述が多い。現に、国の定める教育振興基本計画(令和5年度~9年度)では「1.確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」から始まり、16もの政策目標が列挙されている(その下に数多くの施策・事業がぶら下がっている)。
社会はこれだけ複雑化しているし、教育課題は山積しているし、子どもたちに身に付けてほしいこともさまざまあるから、「あれもこれも」となるのは、ある程度は仕方がないことだとは思う。だが、「AもBもCもDもEも大事です」という並列に挙げていくばかりでは、何がとくに重要なのかがわからないし、何を先に取り組めばよいのかという時間軸も見えてこない。そうした結果、やることはどんどん増えていくばかりになる。
なぜ、限られた数値目標ばかりに気を取られるのか
とはいえ、校長や教職員あるいは教育行政職員等の中には、「子どもたちの関心や好奇心を大切にする授業にしたいとは、前から常々考えてきた。学力テストの結果がすべてではないことなんて、わかり切っている」と述べる人も多いだろう。なのに、なぜ、テストスコアや残業時間といった、ごく限られた数値目標にとらわれた行動になってしまうのだろうか。
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