電波オークション導入へ 膨らむ落札額の落とし穴
スマートフォンの普及で新たな電波の需要が高まる中、携帯電話向け電波オークション(競売)が導入される見通しとなった。政府は3月9日、電波法の改正案を閣議決定。今国会で成立すれば、2015年に実用化が見込まれる高速通信・第4世代携帯(4G)向けからオークションが実施される予定だ。
電波オークションとは、いちばん高い価格で入札した通信事業者が、電波を一定期間利用できる制度だ。欧米を中心に30カ国以上が導入済みで、アジアでは韓国や台湾で開始されている。
日本でも「電波は国民の共有財産」という観点から、オークション導入で相応の金額を支払うべき、との批判は根強く何度も導入の議論がなされてきた。しかし、「費用負担が大きくなる」と通信・放送業界などが反対。頓挫が続いていた。
今回の決定は、東日本大震災の復興財源の不足が後押しとなった。落札額は海外での事例などから数千億円規模に達するとみられている。
オークション導入のメリットは財源確保以外にもある。一つが割り当て先決定の透明化だ。これまでは電波行政を担う総務省の裁量に委ねられていた。利用者数や事業計画など項目ごとに点数化しているものの、選考過程は完全なブラックボックス。4事業者が獲得に名乗りを上げた900メガヘルツ帯をめぐり、2月末にわずか1点差でソフトバンクに負けたイー・モバイルは「総務省からは報道発表以上の説明はなく、1点差がどのように決まったか謎のまま。納得できない」(幹部)と恨み節。一方、落札額がすべてのオークションでは、このような不透明感はない。