大阪の名門・北野高校、「京大合格107人」快挙の裏に"自律"で磨く異質な強さ 進路を指導でなく支援、特別な入試講習なし

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「昨年、東京で行われた模擬国連の全国大会を見学したのですが、首都圏の中高一貫校はすごい。やはり6年間という期間が強みになっていると感じましたね。最後の1年間は大学受験の準備にあてますから、実質5年に対してわれわれは2年で勝負しなければならない。これだけはどうしようもありません」

北野高校の校舎

ただ、北野は先輩が築いてきた伝統がある。

「伝統の厚みの上での3年間なんです。本校は勉学だけの学校のように見られているかもしれませんが、実は文武両道を掲げ、クラブ活動でもよい成績を収めています。クラブ活動も行事も、やはり先輩から後輩へとつながる伝統がある。それが北野の強みです」

同校は、実は体育の授業にも力を入れている。高校としてはめずらしい50メートルプールが整備されており、2年次には4泳法を習得し、50メートルを泳ぎ切らないと単位がもらえない。学年の枠を超えて開催される水泳大会は、応援する生徒も盛り上がる一大イベントだ。

体の鍛練を重視する方針は、行事にも表れている。1935年から続く伝統行事「断郊競走」は、1、2年生が真冬に淀川の河川敷を疾走する。この断郊競走は、卒業生の手塚治虫氏の漫画にも登場するという。

なぜ、勉学だけでなくクラブ活動や体育、行事にも力を入れるのか。

「社会で活躍するためには、一歩踏み出す力、考え抜く力、そしてコミュニケーション能力も求められます。これらは勉学だけで養うことは難しいでしょう。与えられたものをこなすだけではなく、自分たちで切り開いていくには別の鍛錬が必要だと考えます」

クラブ活動がさかんな同校だが、いくら優秀な成績を収めても、校舎に横断幕を掲げて祝うことはないそうだ。

「横断幕を掲げたのは、当校卒業生である吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されたときだけです。努力は、顕彰されるためにするものではない。あくまでも、自分や目標のためにするもの。価値判断は自分自身で行うように、という思いが背景にあるのです」

北野高校の躍進は、難関校を目指させる進路指導や入試対策によるものではない。生徒の自主性と基礎学力、そして多角的な人間形成を重視する教育の賜物と言えるだろう。今後、北野高校は教育をどう発展させていくのか、そしてどのような人材が輩出されるのか、引き続き注目したい。

(文:柿崎 明子、注記のない写真:北野高校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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